第16話 どうして私を助けに来ないの...?
「誤解?」
男は驚き、声を上げる。
「はい。アロクスさんもとい警備隊長が自ら妻と子を殺すという選択をしたとお思いなのですよね?」
「そ、そうです。だってそれしか考えられないじゃないか!」
「そうでしょうか。まさか約束をした警備隊長だけがその選択をしたというのも難しい話でしょ?」
「そうですけど...。じゃあほかにどんな可能性があるというですか!」
男は冷静さを欠いて声を荒げる。
「落ち着いてください。こう考えてみてはどうでしょうか。警備隊長はその時村にはいなかったと」
「確かに可能性としてはあり得るけど...。なんでそんなにアロクスの肩を持つんですか!」
男はさらに問いかける。
「私はみたのです。庭で狂ったように自分を戒めていた警備隊長を」
「え?アロクスが?」
「はい。そして彼の手には家族の写真が飾られているペンダントが握られていました」
「そんな...」
「私はここまで自分に責任を感じている人がそんな選択をするとは思えないのです」
「なるほど。ただ、まだわからないだろ。あの、お願いです。ここにアロクスを連れてきてください...」
男は覇気のない声でサルバドールさんにお願いする。
「わかりました。ここに連れてきます。くれぐれも手を出したりはしないように」
「はい。わかりました」
私は二人の会話をじっとみていた。愛する女性のためを思い強く嘆いている男を見てハッとさせられたのです。
どうしてマルクは助けに来ないの...?
あんなに仲が良く、一緒に遊んでいた。
私は昔からマルクのことが好きだった。
話している時や遊んでいる時のキラキラした顔。私に危ないことが起きたらすぐに駆けつけ、助けてくれる度胸。
そんなマルクが好きだった。
でも拉致されて、もう数ヶ月。一向にマルクが来る気配はない。
マルクは私のことが好きじゃないの?
会いたい...話したい...守られたい...。
狭い檻で過ごし続け、自分の精神を安定させるために自分を騙しながら過ごしてきた。でも、もう限界が来そうだった。
ただ、その限界が来たからと言って自分に何が起こるのかもわからない。
自殺するのか?
こんな狭い部屋でどうやって?
作戦を無視して強行突破でここから出るのか?
今まで協力してくれたサルバドールさんの気持ちは?
延々と自問自答を繰り返す。
考えが荒削りとかそういうことでもなく、ただこの状況が頭打ちの1番気持ち悪い心境。
私はどうすればいいのか?
急にヒステリックになっていく私の心にどうすることもなくただ目の前の会話を聞いている。
マルク...助けに来てよ......。
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