第15話 執事と囚人と侵入者

「ちょ、ちょっと待ってよ!」


私が問いかけても彼の動きは止まらなかった。アロクスとの関係を断つと言い切った彼だが、牢の扉への足取りは重い。


まだ、何かあるはず。2人の関係を戻すための情報が。


赤の他人ながら自分の中で渋々決断したであろう彼のことを思う。


そして彼が牢の扉に手をかけた瞬間。


ガチャ


向こうのほうから扉が開く。


そこにいたのはサルバドールだった。


「!?」


彼はサルバドールの姿を見てギョッとした。そりゃそうだ。だってあの人は侵入者なのだから。


そしてサルバドールは無理やり逃げようとする彼を捕まえてこう言った。


「大丈夫ですよ。私はここの執事ですけどあなたに何かするつもりはありません。安心してください」


「え!?」


彼は安心したようにその場に座り込む。


「あの、サルバドールさん。どうしたんですか?」


「いや、ちょっと。その」


サルバドールは見知らぬ顔の侵入者がいるから話しづらそうだった。


「あ、その人は大丈夫ですよ。話を続けてください」


「あ、それじゃあ...」


「ちょっと待って。2人はどういう関係なのですか?」


その男が質問をした。よく考えれば当然だろう。檻の中にいる私と、ここの館の執事がこんなにもフレンドリーにしていたら。


「そうねぇ。誰にも言わない?」


「はい、もちろんです」


「実は、私とサルバドールさんはここから脱出するために組んでいるのよ」


「組んでいるんですか?執事なのに」


「はい。別に私はここで執事をしたくてしているわけでもないですから」


「へぇー。それで脱出までどのくらい進んでいるのですか?」


「まだ全然よ。そうだっ!あなたも手伝ってよ」


「手伝ってと言われましても」


「人手が増えるのは確かにいいことですね。まあ判断は委ねます。


それよりアノンさん。地下の警備隊長のことなのですが...」


「!?。警備隊長を知っているのですか?」


「ええ、まあはい」


「あ、そうだったわ。サルバドールさんこの人は警備隊長に会いに来たのよ」


「そうなんですよ。アロクスに、警備隊長に合わせてくれませんか?」


「ちなみに、どうして会いたいのですか?」


「それは...」


その男は会いに来た理由を話し出す。


「なるほど。そんなことが...」


「そうなんです。だから会わせてください」


「あの、もしかしたらですけど。

大きな誤解をしているかもしれませんよ」

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