第6話 脱出の糸口

それからというもの監獄での生活はまさに地獄でした。


毎日毎日、マリアの罵声を浴びせられ、おもちゃの銃のようなもので撃ち続けられて遊ばれ、ある日は監獄の中に入ってきて拘束されてムチで叩かれ続けた。


またある日は、突然「嫌いな動物はなんだ?」と聞かれ私はすぐに「犬」と答える。


私は犬が苦手だ。子供の頃後ろから思いっきり噛みつかれ、その頃からトラウマになっていて子犬を見ただけで思い出して怖くなってしまう。


すると次の日、マリアがやってきて


「ほら、あなたの大好きなワンちゃんよ」


と言うと、檻の扉が開き、凶暴そうな大きくて黒い犬が三匹入ってきた。


みるからに怖そうで入ってくるや否や、大声で吠え出した。


私は耳を塞ぐ。必死に。


マリアの方を見ると想像以上に私が怖がっていたのか今にも笑い出しそうな顔でこちらを見ている。


幸いにもその日、犬たちに噛まれたりすることはなかった。


するとマリアは怒り出した。


「なんなのよこのバカ犬たちは!!」


と言い持っていたムチやおもちゃの銃で三匹の犬たちを嬲り続けた。


私は見ていられなかった。確かに犬は嫌いだが一方的に恐怖を持っているだけで一般的な倫理観は持っている。


力のあるものが力のないものをいじめ続けているのを目の前で見せられてもちろんいい気はしない。


目の前で行われている行為は今まで、これからも私がされている行為である。


私は目の前でいじめられている犬を助けることもできないまま目を背けるしかできない自分を恥じた。


毎日毎日マリアにいじめられ続けていたが、そのうちマリアの行動パターンがわかってきたかもしれない。


私の1日はマリアに起こされてはじまる。正確に言うと、マリアが私で遊んでいて急に目を覚まされる。


時計もなく、いまが朝なのか夜なのかも分からずに生きている。


時々起きていたらずっと眠たい時がある。もしかしたら2時間3時間ぐらいしか寝ていないのかもしれない。


そしてマリアが飽きたらおそらく執事的な立場の人に朝食が配られる。その内容も話によるとマリアが決めているらしい。


何が怖いって、マリアが私を監禁していることをマリア以外の人間が少なくとも1人は知っていると言うことだ。


前からお金持ちのご令嬢とは知っていたが、家族内ではどういう感じなのだろうか。


少しの嫉妬でここまでしてしまうなら、自分の家族にも何か危害を加えている可能性も考えられる。


そしてその朝食だが内容は様々でトーストや目玉焼きなどの良いものもあれば、生のじゃがいもやコオロギ、泥のついた葉っぱなどがある。


この差はなんだろうか。


そして私は過ごしていく中でここから脱出できる糸口を探した。


私が目をつけたのはこの2点だ。


マリア以外にも少なくとも1人は私の状況を知っている人がいること。


朝食はマリアが決めることもあれば別の人が決めることもあるかもしれないということ。


二つ目は憶測でしかないがコオロギやバッタなどが多い中でたまにくる、目玉焼きやトーストはあまりに不自然だ。


さらにあの飽き性でガサツなマリアが毎日毎日朝食を決めているとも思えない。


今考えている作戦で、もしかしたら脱出することができるかもしれない。

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