第4話 地獄の始まり

私がその苦い記憶を思い返している間にマリアは私の前からいなくなっていた。


とりあえず整理すると、マリアはマルクのことが好きで、私よりも先にパーティー会場に来ていてマルクと話していた。その時にマルクの口からわたしの名前が出たので見にきたらこんな汚い女だったと。


とんだ八つ当たりだ。


私はただの幼馴染なのにそれだけで嫌悪感を持たれてしまった。


私もマリアに対しては嫌悪感しかないが。


すると私の元へマルクがやってきた。


「ごめんアノン。さっきマリアに何か言われただろう?」


「ううん。大丈夫マルクは何も悪くないから」


「そうならいいんだけど、とりあえずアノン、楽しんでいってね」


「うん!!」


ほんとにマルクは優しくてカッコいい。


マリアが好きになる気持ちもわかるけど私だって好きなんだから。


そしていよいよパーティーが始まる。


司会の合図とともに一流アーティストたちの演奏が始まる。


目の前のテーブルにはたくさん美味しそうな料理が置いてある。


私が大好きなチキンソテーに手をつけようとした時。


ガシャン


急に照明が消えた。


この城の側近たちは慌てながら原因を探す。


司会も冷静を取り戻しみんなを安心させるように務める。会場はしばらくざわざわしていた。


何も見えずにその場から動けない。


会場は混乱していた。


ただ、その場から動けないのは、


私だけだった。


そして目を開けるとそこは監獄だった。


あのお嬢様、マリアの声によって全てを思い出すことが出来た。


ここに閉じ込めたのはマリアだ。


私の中で自然と結論付けられた。


「あら、もうお目覚め?」


「あの、マリアちゃん。ここはどこなのですか?」


私は機嫌を伺いながら優しい口調で聞いてみる。


「フッ、そんなことも分からないのですか?全く貧乏な女は何も知らないのですね。見ての通りここは監獄よ!あなた専用のね」


予想通りの返答とセットの罵り言葉。ここで怒りを出してはならないと思いまだ丁寧に聞いてみる。


「どうして私は監獄の中にいるのですか?」


「なんでかしらね~。あなたが勝手に入ったんじゃないの?」


明らかにあの悪役令嬢が上の立場にいる今、歯向かうこともできず、ただ黙って罵りを聞くしかない。


「まぁどうしても聞きたいのなら、そこにあるきったない水を飲みなさい」


マリアの目線の先を見る。そこにあったのは紛うことなきトイレだ。


プライバシーなんてあってないような丸見えの位置にあるトイレだ。


トイレの中の水を飲めと、言っているのだろう。


別にここに入れられた理由がそんなに聞きたいわけじゃない。なんなら理由はわかる。きっとマルクのことだろう。


ただ私は何もすることができない。


完全に閉鎖されたこの監獄の中で、映画のような出れそうな穴もなければ掘れそうな床もない。


今は言いなりにならない限り何も始まらないのだろう。


そう考えてしまっていたのだ。

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