第41話 ゲリラ
地下監獄の前には機兵が待機していた。まだ、こちらの存在を気取られてはいない。私は、ハイドラから獲得したスキル
「理を紡ぐもの 五大元素よ 我が手に宿れ 【ファイアー・エンチャント】」
更に炎を覆い、切断するのみではなく切断面を熱で熔解させることで、即時の復帰を困難にさせるという作戦だ。深呼吸する。……外には何十もの機兵が待ち構えている。一人の大立ち回りで、どこまでやれるか。
(……できる……私なら、……絶対にっ!)
機兵相手に本格的な戦闘をするつもりは無い。機動力を活かし、遮蔽物に隠れながら敵の背後から機兵の脚部関節を破壊していく。それが、今回の作戦だ。
この街を歩いて回っていたのは無論、観光のためではない。ゲリラ戦の時に遮蔽物となる場所を探していたのだ。
(機兵は脅威ではあれ、この街のカスタマイズ機に携行されているのは対人制圧用の武器。私には通用しない。……気をつけるとしたら、あのロングソードね)
街の外でドンパチしあうならいざしらず遮蔽物の多い街中だ。八メートルもある機兵がロングソードを振り回すのは至難の技だ。小回りの聞くこちらにアドバンテージがある。
「アルマトスフィア」『――限定展開!』
脚部と腕部のみに外装を施す。ミーレスの脚関節を破壊して一撃離脱。これを繰り返す。
「――まずは、一機っ!」
ミーレスは反撃を試みるも、すでにそこには私は居ない。高速起動の一撃離脱。建物を盾にしながら一機、一機、脚部を破壊、動きを封じる。
『ゲリラの秘訣は陽動と撹乱。小娘、隊長機を見つけて鹵獲しろ。隊長機のミーレスを奪えば、指揮系統を混乱させられるはずだ』
「了解」
隊長機を見つけるのはそれほど困難なことではなかった。明らかに他の機兵よりも整備の行き届いた機体。露骨に派手なペイントにいかにも隊長機といった感じのメンテナンスの施された姿。
まっとうな戦争であれば、あれほど目立つ機兵を囮にしそうな物だが、攻めるばかりで攻められることを想定していないこの国では、その可能性は非常に低かった。
鹵獲した隊長機から操縦者を追い出し、完全に拘束し、機兵の中に入る。
『ビンゴ。やっぱ、コイツが隊長機で正解だったみたいだぜ。携帯型の通信装置だ。これを使って、カチドキでも吠えてやれ』
ここまでコケにされれば、大将であるロード・シュタインも黙って見過ごすわけにはいかないだろうというリューの判断だった。
「大将首、討ち取ったわっ! ロード・シュタイン。あんたが恥知らずの臆病者でなければ、出てきて私と戦いなさい」
通信機ごしにそう叫ぶのであった。
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