第25話 これにて戦いのおわりだね
『死ねやぁ!!!!』
『君が死ね!!!!』
何万合にも及んでいる打ち合いは、矢張り質量で勝る
けれど、
『ハァッ!』
小柄なオウカは鉄傘から放たれる拡散しやすい
『
回避運動と得物による迎撃。
しかし、その内一つでも打ち漏らせば、
『……ガァ!』
頭部が爆ぜた。
けれど
***
『そろそろ
『うるせー、俺はまだまだヤれるぜ?』
宙に浮く
共に『
大柄の
対する小さな桜色も排熱が水蒸気の如く、魂の粒子を散らしている。
『ンじゃ、もう一発!』
次男は
大上段から振り下ろせば、相手は右に回避。
傘の石突が迫れば、振り下ろしきって一回転。
その動きで回避。
回転途中で強引な放出を左にかけ、変則の
しかし、当たりはすれど広げられた傘に阻まれ、ただ飛ばすだけだった。
『〜〜〜〜ッッ!!!! キくなあ!』
『キいてンならとっととおっ
オウカは利き手を振って痛みを
どこまで本気でどこまで冗談なんだか、と
今度は鎖を射出し、フレイルのようにリーチを伸ばしての攻撃。
遠心力追加のマッハ数千を超す一撃を見舞う。
その速度故に回避し切れないと判断した神仙は、勁力を放射し迎撃。
ぶつかり合う爆発と衝撃波で辺りが数百キロがぐちゃぐちゃになる勢いだ。
『くたばれやぁ!』
その爆風に紛れて、
爆発の中でも相手を発見出来たのは友である皇太子の知覚強化があったからだ。
直撃──、
『……やっぱりキくね』
否、防がれた。
正確には左を突き出されて防がれた。
その左腕の『
『コレ、消耗が激しくてヤなんだけどね』
オウカは体のあちこちを膨らませていく。
『
『天まで
『イヤイヤ、そこまで行ったら取り回し悪いでしょ』
オウカは二メートルほど(
鋭角的ながらマッシヴさを持つ
昼において赤い空の下、再び衝突が起こる。
***
莫大な衝撃波。
本体と同様に、血管が浮き出るような生々しい膨れ上がり方をしてる鉄傘が、それの質量に負けない衝突をしていた。
いや、
しかし、
『はぁぁぁぁ……!』
鉄傘を再生させているのだ。
『脳筋っぽくて本当はイヤだけどねっ!』
その余波で地上は層が何枚もめくれ上がり、加圧されている部分は赤熱していた。
『つっても互角じゃねえか!』
『甘いよっ!』
オウカが指を鳴らすと、
グボン!
向けられた
***
『……っ! 付着細胞の爆破か!』
『
次男は得物の予想外の方向転換に無理矢理な制動を『
『貰いっ!』
そこに神仙の畳んだ傘の突き。
再びグボン!
突きが『
血飛沫が舞い、内容物もブチ
『……良い加減死んでくれないかなぁ!』
『だから、テメエが、おっ
ごぼり、と
けれど、その目には未だ生気が
『生憎なぁ……! 嫁と
傘が刺さり爆ぜた部分を再生させる。
急速再生を繰り返す内に全身に
『顔ぉ……!』
得物を手放し、左で傘を、右でオウカの
細胞単位の爆裂を痛みを無視して、無理矢理潰そうとする。
『がぁ、あぁぁぁぁ!!!!』
桜の『
肉のようになっている装備の何枚をも
『った〜〜〜〜……! 全く、しつこいなあ!』
『しつけえのはテメエもだろ!』
『ああ、でも分かったよ。いくら致命傷級の
オウカはここまでの手合わせで、ようやく
『あの『
『犯してねえ。両者同意の上だ』
ぺっ、と獣の夫は顔面に溜まった血を吐き捨てる。
『かぁー、僕でもここまで元気にはならなかったよ』
愛のチカラってヤツ? と神仙は吐き捨てる。
『ただでさえちゃんと愛されてんだ。
国を滅ぼすような獣との愛の営み。
それは
『へぇ、そんなに。ま、確かに具合は結構良かったけどね』
『ああ、そうだぜ。数の子天井に俵締めだ』
『うっわ、惚気て来たよ』
うへえ、と装甲の下でも分かる引き顔を、オウカは作る。
『聞いて来たのはそっちだろ』
『いや、ていうか僕ら穴兄弟じゃん』
『残念でしたー、俺は処女も捧げてるからテメエとは次元が違いますぅー!』
次男坊はマウントを取ったついでに、地表に落ちた
『フンっ!!!!』
彼は得物による
オウカはそれを鉄傘で受け止めた。
『対策は思い付いたみたいだね』
『たりめーだろ』
ようは
『放出する勁力……、いや術式も混合させたモノで燃費もバッチリと』
『
打ち抜いた。
食らった神仙は大気を何枚も割り、
そこに
地面は大きく凹み、何十キロものクレーターが出来る。
辛うじて広げた鉄傘で受けたオウカは、その巨体を大きく歪ませていた。
『そろそろ燃料切れじゃねえの⁉︎』
『君殺すまでは保たすさ!』
そう言う神仙の『
『しつけぇ!』
『君もねえ!』
鉄傘を閉じることでいなした桜は、崩れた体勢の
追撃の
『そう何度も撃てば慣れるっつうの!』
そう言って再びパワーダイブを
しかし、そこに邪魔が入った。
***
『ワイバーン⁉︎』
積乱雲よりも分厚い層を成して、
数は兆をくだらないだろうか。
『……やれやれ、テムったら予備兵力まで全部投入しちゃって』
空に上がりながら、オウカは(お節介焼きな恩人だ)とボヤく。
また、同時に魂の補給が出来て有り難いとも思った。
『さあさあ! いかがする⁉︎
神仙は敗けられない戦いに勝利の確信を持って空の武侠に問いかける。
『こちらは兆の手下! 殺せば僕が強くなる! これでもまだ続けるか⁉︎』
『……』
上空の
『どうした⁉︎
『……』
まだ黙っていた。
『ならばこちらから仕掛けに行くよ!』
『……やっぱオレはまだまだ、だ』
蒼雷が貫いた。
***
魔獣の群れは混乱していた。
四方八方から雷や炎が群れを貫いて来たのだから。
隊列が乱れる魔獣の軍勢にとある通信が流れた。
『『
その声の主は
『オレが世界征服するのに軍の力だけかと思ったか⁉︎』
『世界を
攻撃はみるみる内に魔獣の軍勢を削っていく。
『
数百人が空に飛べば魔獣はたちまち消えていく。
『そいつらから集めに集めた名うての武侠、三六二三人! オレほどじゃねえが腕は立つぜえ!』
対照的に高笑いするのは
それに気付いて彼は気を取り直すが、
『これだから層の厚い国はイヤなんだ!』
と、怒りはしていた。
『ま、いいさ。魔獣共を殺せば殺すだけ僕が強くなるのは変わらない』
『果たしてそうでしょうか?』
***
オープン回線に割り込む艶と、どこか
『魂を取り込む術式は見事と言っておきましょう』
しかし、
『それは私が割り込む余地ですよ?』
同じ血族が取り込まれている。
それは術式として充分な『代価』であった。
『がっ、があぁぁぁぁ!!!!』
生体金属で出来た神仙の肉体が崩壊していく。
加護が反転した呪いである。
獣と同じ血筋を持つ魂を取り込み、あまつさえ肉と無理矢理交わった者の末路であった。
『さて、
『おう、どうした?』
『有り難う御座います』
『今、ここで言うか?』
『必要と思いましたので。あと、オープン回線でしたら逃げ道がないので』
うわー、イイ性格、とその夫は半目になる。
『ま、そういうこったら逃げねえのに律儀なオメエってことで』
『そういうことで。さ、そろそろ仕上げに入りましょう』
***
『ま、まだだ……!』
『やれやれ、術式侵入時点で他の魂と分離させるたあ、器用なこった』
『生憎、半端に仙人やってないからね……!』
『お互い半死半生。
『あのねえ、こっちは君を殺してもまだまだた次があるんだよ?』
なんだ、そんなことかよ、と
『安心しな、テメエはここで殺す』
『そうかい、やってみるといい』
両者、構える。
大気が震える。
大地が裂ける。
岩盤が浮き上がり、龍脈が
『『
『『
神仙が放った。
次男が突撃した。
『
『
毒々しい桜色に舞い上がる
それを撃ち抜いて迫るのは
傘全体から放射される
しかし、
故に『
『ブッ飛べぇぇぇぇええええ!!!!』
パワーダイブからの
『あ、ああああぁぁぁぁっ!!!!』
打ち上がった
それは音を何枚、何千枚と超して空へと上がっていく。
『くたばれっ!!!!』
と、次男が叫んでようやく返事が無くなった。
『ハァ、ハァ……!』
空気のない宙にて一番明るい星が見えた。
獣の夫は(眩しいな……)とどこか場違いな感想を抱きながら、脱力した。
けれど、再度全身に力を入れる。
まだ、
『
敵の総大将を討ち取った際に必要な叫びのそれである。
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