第36話 ドレス
シンノスケはユウコがあてがわれている部屋に向かった。後ろにフラフラと歩くユウコを引き連れて。真夜中の兵舎はその廊下の壁に申し訳程度に燭台が備え付けられ、小さなろうそくの灯りが点在している。
シンノスケはユウコの部屋に入り、ユウコもそれに続く。窓際までシンノスケは歩き「こっちへこい」とユウコに命じた。ユウコのシルエットが月明かりが差し込む窓の四角の中に黒く立つ。窓際の壁にもたれて立つシンノスケには月明かりで照らされているユウコが良く見えている。
「脱げ」シンノスケは言った。ユウコは一瞬身体を硬直させた後、シャツのボタンを外し始めた。シンノスケは口をだらしなく開き、腕を組んで食い入るように眺めている。ユウコのシャツが床に落ちる。月光に照らされてユウコの乳房は顕わになる。
「思ってたよりも大きくて、思ってたよりもカタチのいいチチじゃねえか」シンノスケはユウコに近寄りその胸を正面から掴んだ。「んふふふ。さぁ、下も脱げ。脱ぐんだ」と、シンノスケは命令した。
「はぁー。なんともダセエ事をしてるじゃねぇか、シンノスケよぉ」と、部屋の入口から突然声がした。「誰だっ!」シンノスケは声を上げる。開け放たれたドアから入ってきたのはゴローだ。ゆっくりとゴローは二人に向かって歩いている。
「
「くっ、だがっ!」とシンノスケは言って、ゴローに対して
「ホント、バカだな、オマエ。オレはエンチャンターだぜ?
「ご忠告ありがとよ!」シンノスケは一転、ゴローに襲い掛かろうと一歩踏み出した。殺意をその全身に載せて。「ま、そして、肉弾戦なら、この中じゃユウコが一番強い」というゴローの言葉より早かったか遅かったか。ユウコの右足がシンノスケの顔面を捉えた。ユウコは上段の蹴りを振り抜き、シンノスケは窓の横の壁に吹き飛ばされた。「魔法効果付与が得意ってことは、魔法効果解除も得意って事なんだぜ?エンチャンターのオレが先ずするべきは、ユウコにかけられた
「ありがと、ゴロー。助かったわ」ユウコはシーツをマントのように纏いながら、自身の身体を抱きしめてそう言った。ゴローに背中を向けたまま。
「惚れたってんなら、惚れたって言ってくれてもいいんだぜ?」ゴローは茶化すように言う。
「うん。カッコ良かったよ、ゴロー」ユウコは姿勢を変えずに呟いた。
「おっ!そうだろう?」ゴローは笑う。
「でも」
「でも?」
「シゲルやトーマの方がカッコイイわね。ゴローは現状三番目よ」ユウコはゴローに顔を見せながら、そう言ってほほ笑んだ。
「そうか。そりゃそうだ。アイツらはマジでカッケーもんな。そりゃ、仕方ねえ」ゴローはユウコの頬の涙の跡には気づいていないフリをして、気絶したシンノスケを背負う。
「明日、オレはみんなにこの事を報告するぜ。こんな事があった後では、シンノスケに背中は預けられないからな」
「ええ。そうね」
「あと、コレはオレの勘だし、外れていて欲しいし、ユウコ自身がそれどころじゃないのかも知れないんだけど」ゴローはそう前置きをする。
「なに?」
「タカコのケアはユウコに頼んでもいいか?」シンノスケを背負い、部屋の出入り口に向かいながらゴローは言う。
「あ、うん……。わかった……」ユウコは答える。そして、「ありがとね、ゴロー」と言った。
「あぁ。気にするな。オレ達は仲間だ」ゴローは立ち止まり、ユウコに背中を向けたまま言う。
「最後にひとつ聞いてもいい?」ユウコはその背中に語り掛ける。
「なんだ?」
「ゴローって、元の世界ではかなりモテたんじゃない?」
ユウコの耳に入って来たフッと漏れ出た空気のその音はそれは果たしてゴローの笑い声だったのかどうか。
「何を聞いてくるのかと思ったらそんな事か」
「モテたんでしょ?」
「過去形にするな。オレは今も昔もモテている」
ゴローはそう言って部屋を出て行った。
シーツを纏ったユウコのそのシルエットはドレスを着た淑女の様に窓の明かりを黒く切り抜いている。
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