第21話 会議
「長くバラバラに拘留していて悪かったな」
スレイが話し始めた。王都を囲む壁の外の森の中に建つ少し古ぼけた木製の平屋の中の、広間と呼ぶには小さな空間に、異世界人八人は集められていた。この建物には似つかわしくない十二人掛けのテーブルセットが持ち込まれ、異世界人は各々思い思いにその椅子に掛けている。五人が向かい合わせに座り、両端に一人ずつが座る仕様のそのテーブルの、一端にスレイは座っている。壁際にはオーク兵とゴブリン兵が二人ずつ合計四人立っている。スレイの後ろにはバルバスが控えている。
「口裏を合わせた情報をキミ達から聞きだしたところで意味がないと私が判断したのだ。苛烈な環境に拘留する事になった者もいる。それは済まなかった」
スレイがそう言うと、「ま、いいさ。事情は分かるよ」とトーマは言った。それを聞いた壁に立つ兵士はトーマに歩み寄ろうとする。スレイはそれを片手で制する。「よい。彼らが暴力という手段に出ない限り、オマエたちは手を出さなくていい」スレイは言った。
「さて、今日はシュマルカ神について、私が考察するために、キミ達から話を聞こうと思っているのだ。なので、術師の三人には私の近くに座って欲しいと思うのだが、どうか。エレナ、タカコ、ゴローの三人に、私の脇の席に座って欲しいと思っている」
「勝手な事を……」とリュウキは呟き、エレナとタカコはおびえたように身をすくめる。ゴローは「別にいいぜ」と言い放ち、トーマは「それぐらいいいんじゃないか」と言った。
「まぁ、この場は紳士的な対話の場にしたいとスレイさんは思っているんだろう。そして、オレたちにとってもシュマルカ神の事は他人事じゃない。術師三人だけが密室に連れていかれるよりはオレ達が同席できるだけでもありがたいってもんだ。席次くらいスレイさんの思い通りでいいんじゃねえか」
シゲルがそう言うと、ユウコとトーマとゴローは頷いた。
「スレイ、さん、だと?」リュウキはシゲルを睨む。
「落ち着け、リュウキ。オレ達は今も捕虜の身だ。捕虜の待遇として、今のこの状況は悪いものじゃない。……それに、オレはどうにもスレイさんの事がキライになれないんだよ。暴力はオレ達も振るわれたが、オレ達も振るった。今は、頭に血を上らせる時間じゃない。対話する事でオレ達にも利があるかもしれないだろう?」
シゲルの言葉にリュウキは言葉を詰まらせる。
「心配ならエレナの隣に座ればいい。スレイさんの隣にエレナ、その隣にリュウキ、オマエが座ればいい。エレナの正面にゴロー、リュウキの正面にタカコ、そんな感じで座ればいいじゃねえか」
「お気遣いありがとう、シゲルくん。さて、どうかな。シゲル君の提案の様に座ってくれるか?」
エレナとタカコは互いに目を見合わせ、その後にユウコとシゲルを見た。そして、席を立つ。ゴローは躊躇なく立ち上がり、スレイの左隣に座った。ゴローの着座をキッカケにエレナ、タカコ、リュウキはそれぞれ、シゲルの提案通りに座る。
「ご協力、感謝する」
スレイは軽く頭を下げる。
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