第12話 興奮と涙
アルフレッドたちは、父、タルフレッドにもらった資金で中立国ベラモンテの最東端にある、イベラという街で宿泊していた。アルフレッドたちが宿泊する宿には、世界各地の冒険者たちが集うようだ。次から次へといろんな装備をした冒険者たちが軒を連ねていた。アーサー君とアルフレッドは、いろんな格好をした冒険者たちが目の前を横切るので、興味津々で彼・彼女らを見つめながらお喋りした。
「アルフレッドさん、今の人見ました?アレって、ザンクレットですよねー、あの伝説になってるモンスター、ザンゾゥトの腕から精製される、アーマーの上から装着できる腕装備。ほしいなー」
アーサー君は物欲しげに顔がゆるむ。アルフレッドは特に興味がない…、というか、アーサー君ほどの知識がなかったので、「うん、そうだね」としか、言えなかった。アルフレッドは昨日のアーサー君にとって禁断の話を持ち込んだ。
「アーサー君さぁ…、昨日のことなんだけど、僕は君と同じ、苗字の、家の、ウィリアンって人と話したん」
途中でアーサー君は話を中断させるように別の話題に強引に切り替える。
「わぁ〜あの装備は、リュウの鱗と呼ばれる伝説のアーマーじゃないか…!外にはいろんな楽しみがあるんだね」
アルフレッドは、途中で切られた話を盛り返した。
「だからさ、ウィリアン、知ってるでしょ?お兄さん…なんでしょ?僕は今度、テンペスター家にお邪魔できるんだけど、アーサー君も一緒に行かないか?」
アーサー君は、従順な目で見つめながら話すアルフレッドを見て、話を中断させた自分に半分腹を立てつつ、半分は悔しさや悲しさ、を胸に抱きながらアルフレッドの質問に素直に応じた。
「ごめんなさい、さっきは話を中断させて…。僕は確かにあの名門テンペスターの子息だ。でもね、僕はもうテンペスターの人間であって、テンペスターの人間じゃないんだよ。」
アルフレッドが困り顔をするくらい、アーサー君は今にも泣きそうな顔をして、話を続ける。
「兄さんは長男だからと、テンペスターの家を自分が継ぐと父に進言した…らしいんです。そしたら父はこう言ったそうです。わたしを継ぎたいなら弟たちを殺すぐらいないとダメだ…と。」
「実の弟たちを殺す?」という言葉を聞いて、アルフレッドは、自分のことのように涙を流した。もともと、アーサー君が、家庭の事情で悲しみを魅せていたのに、アルフレッドが泣き出すから、アーサー君はアルフレッドに胸を貸してあげる。宿に訪れる冒険者たちはいきなり泣き出すアルフレッドに、駆け寄り、「大丈夫かい?」「何かわからないけど、たくさん泣いていいのよ。」といろいろな人たちに慰められながら二人は自分たちの部屋に戻った。そして二人で気が済むまで泣いた。
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