第11話 国外脱出
アーサー君とデクスターはサイレンの音で過敏になりながらもアルフレッドを助けたい一心で足を進める。アルフレッドは深い気絶から目が覚めた、と同時に二人の介助してもらっていた。
「運がいいな〜僕は、でもどうして?」
まったく身に覚えのないアルフレッド、そんな様子にアーサー君はデクスターの目を見つめる。軽くうなずくデクスター。ん?といった顔のアルフレッド。アルフレッドはなにか思い出したような顔で、物入れから、笛を取り出した。
「その笛は?」とデクスター。その笛は、ターバンベルグへ移動中、アルフレッドの父、タルフレッドが万が一のためのアイテムとして渡していた。この笛を吹くと、瞬く間にタルフレッドの乗るモンスターがここへやってくる。迷わず、アルフレッドはその笛を吹いた。すると、雷鳴のように恐竜型のモンスターが雄叫びをあげたのがわかった。ものの数秒でタルフレッドを乗せたモンスターが3人の目の前に姿を見せた。
3人はモンスターへ乗り込み、一気に国の境界線へ。境界線には当然ながら検問所があり、緊急のサイレンが鳴る、今は急遽、大量の王都兵が集められていた。あるものたちは壁になるため、一列に並び、あるものたちは武器を持って、威嚇、そしてあるものたちは、魔法でモンスターから払い落とそうと躍起になっている。その光景を見てアーサーは口を開く。
「アルフレッドさんが、制圧してから、そんなに時間は経っていないのに、コレですか…、さすがにコレでは……」
無理がある…とでも言いたげだ。実際、国力をあげてという印象を受ける、アルフレッドたち。タルフレッドはこれまでの経験から、モンスターに強行突破を命じた。タルフレッドはモンスターを援護するため、独自の詠唱を行った。
「汝、アルフレッドとその仲間たちを、彼の地へ脱出させんことを、ここに誓うと…しよう。分身スキルシリーズ、『カゲフヤシ』」
検問所の前に並ぶ、兵士全員の前に全員分のタルフレッドの影分身が一度に出現した。アーサー君は…
「これほどの…魔法を扱う人がいるなんて…、絵本の中だけだと思ってました。」
タルフレッドがその問いに答えた。
「たしかに、そんな絵本あったな。その本というか、こういう魔法を扱えるのはひいては賢者だけだものな。それをこんな間近で拝めるとは…君はツイてる。」
影分身により、検問所の王都兵は皆、戦闘不能になった。こうしてアルフレッドたちは無駄な血を一滴も流さず、国を脱出した。それから、タルフレッドは、中立国ベラモンテへ着くと、急用があるからと、アルフレッドたちをおろした。そして別れを告げる際、アルフレッドはモンスターの笛を返した。「助かったよ、父さん」と、ひとこと添えて。これで、3人の新たな旅は幕を開けた。
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