第10話 試練放棄
参加者はアルフレッド以外全員が屠られていた。アルフレッドはいつでも退避できるように、デクスターと逃走経路を確保しようと計画を立てていた。アーサー君が試練範囲外に避難した、アルフレッドを目指して近付いてくる。それに気付いたカグラ様もこちらへ近付いてくる。デクスターがアルフレッドに忠告した。
「アルフレッド、おそらくだが、カグラ様とかいう囚人はおまえが試練範囲外での襲うだろう。用心しろよ。」
「分かってる。このまま逃げられるとは思ってない。ただ、アーサー君はなんとしても助かるよ。」
「そんな、どうやってやるんだよ。能力もないおまえが」、とデクスターの目がそう訴えている。
「なにもできないと思っているね?」
「もちろん思っている」というような、反応をしたデクスター。ただデクスターの想いの中には、期待もあった。「もしかしたらこの窮地に〝アイツ〟がまたやってくれるかもしれない」とほのかな願いがあった。
ところで〝アイツ〟とは、いわゆるアルフレッドの無意識での存在、もう一人の…、とでも表現しようかな。まだ、力も能力も正体も不明だが、現状では一番頼りになる存在だろう。
「オラオラオラー!場外だろうが関係ねぇー、おい、チビ!どけよ。」
アーサー君はカグラ様にチビと揶揄された。カグラがアルフレッドとデクスターを無条件に攻撃するのは察していた彼。武器のようなものを取り出してトウセンボウした。
アーサー君はカグラが強いと分かっていた。それでもアーサー君にとっては、アルフレッドが最初のともだち的存在。その関係性をアーサー君は壊されたくないと思った。
「アルフレッド君は傷つけさせない、僕が守るよ。」
カグラはそんなアーサー君をまじまじと見つめ、ベロをペロっと、さらにひとこと。「そそるぜ…おまえの血はどんな味がするんだぁ〜」と、気色が悪くなったアーサー君。それを見て、恐怖のあまり気を失ったアルフレッド。さらにデクスターが、ある意味心配そうな顔でアルフレッドの様子をうかがう。
「死ねよ、チビィ…」
その瞬間、アルフレッドからまばゆい光が発せられた。禍々しい光のオーラが天上へ向けて放出される、地面から少し浮くアルフレッド。光のオーラによって円形状に地面がえぐられていく。もう一人のアルフレッドが口を開いた。
「…アルフレッドを危険に晒すものよ、名を死神と申したな…。アーサーとやらは、アルフレッドのお気に入りだ。今はなにかと時間が惜しくてな、パッと済ませる。」
両手を前に、手はパーに開いて、詠唱なしで、ドーム状の光の膜を覆った。アーサー君以外の身体からは透明な気泡のような球体が、ドーム状の光の膜へ向かっていく。何やら、戦いに必要な能力を一時的に無効化する能力のようだ。代表者はうなりをあげた。
「…そのような極大魔法を、この時から使えるとはすえおそろしいガキよ…。不可能なはずじゃ…、むむっ、もしやおぬし?」
能力を吸い取られすぎて、気を失った代表者と試験官たち、さらに囚人たちはカグラを残してあとはダウンした。カグラは虫の息で、それでもまだ、存在感を示す。
「……そんな力、反則だろ?…、その力、今度あったら奪ってやるん…だっ……ぁ」そして力尽きた。安心してほしい、あくまでも気絶だ。それを見届けると光のオーラは引っ込んだ。それと同時にアルフレッドは地面に突っ伏した。アーサー君はデクスターと協力してアルフレッドを抱え上げ、できるだけ遠くへと動きはじめた。代表者が、最後の力を振り絞って、手を震わせながらポケットに忍ばせておいた。リモコンのようなものを取り出し、ボタンを押し下した。すると、国全体で耳を溶かすほどのサイレンが鳴り響いた。
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