第9話 減刑処置
囚人のメンツの中にいた、アルフレッドのよく知った顔とは、この王都へ着いてはじめて会話をした美少年、アーサー君だった。その可愛らしい顔は、煤まみれになっていた。アーサー君は、アルフレッドと目で交信した。アルフレッドは他の人に勘付かれないように小さく頷いた。その心意は、「僕がどうにかする」というような意味がこもっている。
参加者からなかなか志願者が出ないことを不満気味に見ていた代表者は、ルール変更を強制的に提示した。それは、〝このバルゴラの中に立っている者は全員、無条件に囚人たちの標的になる〟という理不尽な新ルール。業を煮やした結果だ。大変恐ろしく、大半はなおさら恐怖でより、動けないらしい。
代表者は手をあげた。バルゴラの外から様子を見ていたデクスターは、試練の開始を察した。同時にアルフレッドも能力のない状態での戦闘は諦めて場外へ、何としても逃げるという決断をした。参加者たちの心の準備が整う間も無く、試練の火蓋は落とされた。手が下がった瞬間、囚人たちは参加者たちの前に疾走する。アルフレッドはとにかく場外を目指す。
「ヒッヒヒヒッ…オラッオラッオラッオラッ…!」
あのバケモノ級のカグラ様が、1人2人3人となぎ倒していく。さらに、代表者の口から残酷なルール説明がなされた。
「これは、前回もその前も古くからある、囚人のための特設ルールじゃが、参加者を一人戦闘不能にさせれば5年、一人殺せば10年減刑することが国法で定められている。まあ、約束ごとじゃな。」
約束ごと?なにをおっしゃっておられるのか?という話だ。人を殺して減刑処置が約束されている?国法で定められている?ふざけるのも大概にしろ!と、言いたくなるクソ食らえな、ルール。
そう思ったのは少なくとも、参加者並びに、デクスターも感じただろう。というか、この試練のせいでデクスターも山賊になったのだから、被害者という認識で間違いない。
「どうして、そのような減刑処置を可能にしているか?疑問に思うであろうな…。なぜなら君たちは無知だ、無能だ、無力だ、子どもだ、そして、圧倒的弱者だろう。国の外は、新世界か?…違う。馴れ合いか?…違う。世界は一歩外に出れば、弱肉強食。弱い者は強い冒険者に殺される。強い者は、放っておいても頂点へ登っていける。わしらはな、慈善団体ではない。わしらはおぬしたちに、教訓を教えてやろうと、しておるのだ。希望を与えて、野垂れ死ぬよりも、危機感を持って、ここで命を天秤にかけるほうがより自分のためになるじゃろう?どうせ猛者に殺されるなら早いうちに越したことはない。そうは思わんか?」
代表者が長いこと話をしていた間にデクスターの隣まで避難することに成功したアルフレッド。長い話に気を逸らされて囚人たちは攻撃の手を緩めていた。しかし、アルフレッド以外の参加者たちは、ブルブル震えながら長い話に身体が膠着していた。
アルフレッドは密かにアーサー君に目でサインを送った。その動きに気付いた囚人がいた。
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