第7話 神聖なベール
いよいよ試験官が参加者をあつめる。試験官の代表者が前へ出て注意事項を話しはじめる。
「皆よ、よくきてくれた。諸君はそれぞれ、村や街、異国からはるばる自らの足できてくれたのだろうと心からありがとうと言いたい。ありがとう。これから、ちっと…ばかし、儀式めいたことを君たちにやってもらう。アレを見てくれ」
代表者が指し示したのは、神の髪と言われる草で作られたベールだった。輪のなかをくぐるように言っているようだ。
「アレは特別な術をかけておるから、君らの潜在能力を解き放ってくれるだろう。」
冒険者の集いはひとえに能力を解放する儀式。人によってはこの神聖なベールをくぐらなくても自然に身に付いている者をいるのだという。デクスターももちろんあのベールをくぐったひとりだった。
「さあ皆よ、順番にくぐるのだ。」
参加者たちは一列に並んで、仲良くベールをくぐっていく。最後のひとりが通り抜けた時、また代表者の前に集められた。
「さあ、皆、能力は感じているかな?」
群衆がまた騒ぎ出す。
「俺のは、火だな」
「俺は、水だ」
「わたしは、風よ」
「わたしは、なにかしら?とくにへんかはないわ」
「僕は、うわあぁああ、モノが宙に浮いてるよ」
個々に色々な能力に目覚めたようだ。アルフレッドはというと、まだなにかわからないようだ。盛り上がりを増す会場は代表者の声により断ち切られる。
「「「しずまれーーーーーーーーーーいッッッ」」」
「皆の者、これからじゃ。これから冒険者になれるか、なれないか、卒業試験をおこなう。まあ、ありていに言えば試練じゃな。」
さらに群衆が騒ぐ。
「試練?」
「これで終わりじゃないのか?」
「もういいじゃないか?」
「あたしはもう能力者、冒険者よ」
「ほかに何をしろと?」
群衆の不満が会場を埋め尽くす。そんな参加者を見ても代表者は考えを変えない。
「古くから、コレが常識となっている。古くから語り継がれている。古くから古くからあるのじゃ。」
アルフレッドはデクスターが以前に言っていたことを思い出す。「俺は受ける前に諦めた」というような後味の悪い、一言をアルフレッドに吐露していた。
この先の試練がまさに選択を迫られることをアルフレッドは予感した。
「では、君たちに選択肢を与える。」
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