第6話 テンペスター

 ウィリアンの奴隷になってしまった彼は、身体がボロボロになっていたが試験官たちが、テンペスターの家に馬車を出した。ウィリアンはいい奴隷が手に入ったと満足そうな笑みを浮かべて馬にまたがりテンペスター家に帰ろうとしていた。


 試験官たちが言った。


 「少しの間、休憩を挟みます。こちらも集いの準備があります。ではしばし。」


 アルフレッドはテンペスター家に帰ろうとするウィリアンを引き止めた。


 「ウィリアンさん?ですね、テンペスター家の。」


 「おい、おまえ…この空気が読めてねぇのか?」


 「空気?空気は読むものじゃない、呼吸に必要なものだ。」


 「まぁ、そうだが…、それでなんか言いたいことでも?」


 「実は……ですね、アーサー君とは…」


 「アーサー?知らないな。そいつがどうかしたのか?」


 「ご存知ありませんか、それならもうだいじょうぶですね。」


 「変なことを聞くやつだ。おまえの名前は?」


 「アルフレッド、アルフレッド・フラバス」


 「アルフレッド・フラバスか……フラ…ばす?」


 ウィリアンは何か、アルフレッドの苗字に聞き覚えがあった。


 「まぁいい、アルフレッド、ぜひ今度テンペスター家へ足を運んでくれ。」


 ウィリアンはそう言い残すと、馬を走らせた。


 このやりとりを聞いていた群衆は、また騒ぎ始める。


 「何もんだよ?あのガキは」

 「アルフレッドとか言ってたが」

 「あたしもウィリアンどの〜って、やってればよかったわ〜」

 「あの子は、命知らずよ。」

 「あのテンペスター家の人間に、口答えしてたもんな〜」

 「俺にはマネできねぇ〜よ」


 そのやりとりを聞いていてひやひやしていたのがもう一人いた。デクスターだ。


 「アルフレッド、この俺でもひやひやしたぞ。」


 デクスターは小声で、「アイツが出てきてたら、もっと悲惨だったろうな」と言った。デクスターはそろそろ、冒険者の集いが開幕すると予感し、外で待つことにした。外とはいえ、会場は外で、デクスターの外は会場の枠の外、だから見学だな。

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