第5話 冒険者の集い
会場である、王都ターバンキャッスルへ到着していた。会場には色々な人たちがいた。よく言えば奇抜な、面々たち。その中でも主張の激しい男がいた。
彼はいきまいて何やら言い放った。
「おい、おまえら。ちゅう…もーーーーーく」
冒険者の集いに参加するであろう、者たちが個々の仲間たちと談笑していたが、主張の激しい男の呼び声にあたりは一瞬で静けさを増し、皆が男に視線を送った。
「俺はな、テンペスター家の長男、ウィリアン・テンペスターだ。」
アルフレッドはテンペスターという名に、アーサーのことを思いだした。
群衆がふたたび談笑する。
「あんな態度のデカいやつが?」
「あの?」
「テンペスターって言ったら、名門よね〜」
「あたし〜あの人に媚び売っちゃおうかな〜」
テンペスターの長男、ウィリアンは談笑でますます盛り上がる群衆を言葉の刃物で斬り込む。
「だまりやがれーーーーーーーー、この俺はな、もうすでに前々回の冒険者の集いにて、認められた冒険者の一人だ。この程度の試練を乗り越えられねぇようじゃ冒険者にも、俺の従者にもなれねぇよ〜。」
だいぶ上から目線な言葉を並び続けたウィリアン。冒険者になるのがそんなに大変なことなのかと、群衆は言葉を失ってしまった。そしてふたたびウィリアンに視線が集まる。
「今回俺は、非常に忙しいんだが…、。」
群衆の一人が「非常に忙しい」と言ったウィリアンを鼻で笑った。それをウィリアンは見逃さなかった。
「…テ…めぇ、笑いやがったな?しかも、高貴な俺を鼻で笑うとは…。即刻死刑、と、言いたいところだが、俺は寛大な人間だ。選ばせてやろう。牢屋で終身刑を宣告または死刑を宣告されている怪物のおもちゃになるか、俺の奴隷になるか…、選べ。ぷっ…フフッ…ハッ……ハハハ」
なんて酷なことを選ばせる男だと周囲にいた群衆の皆は後ずさりした。それから、怖くなった集いの参加者たちが数人逃げ去った。まあ、こんなことを狂ったように笑いながら楽しんでいる貴族がいたら逃げ出したくもなるよ。
「……どれ…い」
「あーー?聞こえないなー?」
「奴隷が…いいです。」
「えー?あーそー、いいんだな?奴隷で。」
「はい……。」
「よし、決まりだ。」
するとそこにヨーロッパの法王のような服装をした人たちがぞろぞろと列をなす。
「今回も被害者が出たか…」
群衆がまたざわめきはじめた。
「どういうことだ?」
「被害者?」
「もしや、コレって?」
「そうそう、テンペスターのぼやき」
ウィリアンは俺は関係ねーよ、というような顔をして法王のような人たちに話しかけている。
「あーみんな、ごくろうさん。ん?コレか?いやーほんと、こういう子がいて助かるよー。今回もすばらしい若者が自ら、奴隷になりまーーーーす、って言ってくれたんだから。」
「ななな?僕は、奴隷になんかっ…なりたくない」
不当に奴隷にされた彼は、法王のような格好の人たちに助けを求める。
「おねがいします、試験官さま。僕を助けてください。助け…て…、うああああぁーーー、ぐっ…ぅぅ…やめてください、あぁああああーー。たす…げぇ」
頭を地面にこすりつけながら神に祈るようにおねがいする彼を視界から消すように、何もないほうへ目をそらしそらししている。彼はウィリアンにゴミや野良犬を蹴りつける、踏みつけるような扱いをした。ボロボロになった彼の身体をみて唾を吐き捨て、さらには地面に横たわった彼の横顔にウィリアンのテンペスター家、特注の靴があたる。左右にグニグニ踏みつける。それを目を逸らしながら見ていた彼らはウィリアンに言った。
「テンペスター殿、お片付けいたしましょうか?」
「あ、そ?片付けてくれる?よろしく頼むよ。試験官殿ら」
もはや、ウィリアンを鼻でバカにするような、危なげのある若者はいなかった。群衆さえも、静けさを保っている。誰も何も言えない雰囲気をあのウィリアンという男は作ってしまった。ある意味、カリスマ性を感じさせる。
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