第4話 王都の街ターバンベルグ

 護衛になったデクスターと一緒にターバンベルグへ着いたアルフレッド。2人で街の新鮮な空気をたらふく吸い込む。


 ぷはぁぁああああ


 そして大きい口でゆっくり吐き出した。これがターバンベルグの街、まるで中世ヨーロッパ。あれ?よく聞く街並みかな?そう、よくある街並みだ。


 アルフレッドは時々ドロップ品の献上のため、王都へ顔を出していた。それでもアルフレッドにとって王都の街ターバンベルグは都会で、新鮮だった。


 「やっぱりここはイイ、サイコーだよー」


 「そうかよ…そうだろうな……」


 デクスターは機嫌が悪そうな態度だった。もう少しアルフレッドにやさしくしてほしい。元山賊のデクスターとは経験が浅いアルフレッドのために、ほんとうの意味で護衛してほしいわたしだ。


 そんなデクスターだったが、突如アルフレッドへ向かってアルフレッドと歳が近いであろう子がアルフレッドに激しくぶつかってきた。

 その子はショートヘアでボブカットかな?女の子のように可愛らしい狸顔。女装させたら世界中の男が撃沈しろうなくらい、エチエチな…いや、とても可愛らしい男の子だった。胸は?………、ない、当然か、男の子だもんなー。彼は将来、絶世の美青年となるのだろう。


 「君は?」


 「追われてるんだ、一緒に逃げてよ」


 デクスターは「逃げる必要などない」と言った。


 「なぜなら、アルフレッド、貴様サマは、アレを持ってるだろう?冒険者の集いに必要なアレだ」


 「あーそうだよー、コレだよコレ。」


 アルフレッドは何やら背負ってきた旅人のリュックから紙を取り出した。旅人のリュックとは旅人となり、冒険者となる人がはじめに渡されるセンジュ品。


 美少年クンはググッと胸の高鳴りを抑えようと悶えている。


 「アルフレッド君って呼んでいいかな?僕はね、よく女の子に間違えられるんだけど、アーサーっていうんです。アーサー・テンペスター。


 「それで…ですが、その紙って…アレですよね。君もそうだとうれしいな…」


 と、お互いに示し合う前にアーサーの追っ手が現れた。追っ手は何やら王都の兵服を着ているようだった。アルフレッドは思わず、王都兵の前に飛び出そうとしたが、デクスターが小声で「待て」とアルフレッドを止めた。さらに小声で続けた。


 「勝手に捕まるな、アルフレッド。俺は別におまえがどうなろうが、いいんだが…アイツが見てるからな。とにかくな、いまはやめとけ」


 デクスターがおそれたアイツとは。アルフレッドの中の賢者さえもしのぐ力を持った存在、デクスターを突き動かす、理由になっていた。


 「アルフレッド君、ごめんね…、巻き込んで。もう会えないだろうけど、君と出会えてほんとによかったよ。僕の人生では財産さ」


 デクスターは「ほぼ一瞬だっただろ、何をそんなにこいつに」と他人に聞こえないくらい小声で言った。


 アーサー君はアルフレッドたちの目の前で王都兵に捕縛された。手足には、一生外れそうにない頑丈な枷がされた。枷がはまった両手で、アルフレッドにおもいおもいに手を振った。手枷が重いようでぎこちなかったのだが。アーサー君と王都兵の背中が少しずつ小さくなっていく。


 「…ぅぅ…助けなきゃ」


 「バカか、アルフレッド、貴様サマじゃ無理だ。おまえの中の…アイツなら……、いや、おまえには力がないし、どうしようもないだろう。」


 「でも、デクスターなら」


 「俺の敵う相手じゃないんだ。俺は冒険者にはなれなかった、いや、集いには行ったが受ける前に諦めた。俺は根性なんてない、落ちこぼれなんだよ。だから俺より弱い奴等を集めて山賊団を始めたのさ。」


 「…でもデクスターはそんな集いに同行してくれている、心強いさ。」


 「それは……アイツが…まあな」


 冒険者の集いについてくるほんとうの理由は、アルフレッドの中のアイツに脅されているからなんて、デクスターは言えなかった。


 アルフレッドはデクスターの想いに思いとどまってまた冒険者の集いが開かれる会場へと針路をとった。



 

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