第3話 初仕事

「じゃんけん…ぽいっ」


「あ、負けた~、お兄ちゃんは強いなぁ」


とりあえずやる事がないのでクロエと何の駆け引きもないジャンケンをして過ごしていた。

外が暗がり始めた。

もう夜か、気づけばお腹も空いてきた。


「それではこの辺で失礼させてもらいます」


手早くコートを着込んでルナに挨拶をする。


「はぁ?今から仕事だってのに何帰ろうとしてんの?」


「お仕事!?」


確かにこのままではただ挨拶とジャンケンをしただけだ。

何を考えているんだぼくは…腑抜け過ぎだろう…。

空白期間という何もしていなかった日々が生み出した負の遺産の脅威を感じた。

意識を切り替えなくては。

考えてみればぼくらは盗賊、夜が一番の稼ぎ時、ホットタイムなんであろう。

自然と背筋が伸び適度にピリッとした雰囲気が空気を纏う。


「すみません、はい!いつでもいけます!」


「当たり前、その袋を持って森に出発、クロ…じゃなかった…クロエあんたもついてきな」


「うん!」


こうしてぼくら3人編成の盗賊は進みだした、明日も分からぬ未来に向かって…。




・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「え?食料調達?」


「当たり前じゃん、もう夜じゃんお腹空いたでしょ?」


「こっちに一杯キノコ生えてるよー!!ほらおいしそー!!」


ぼくらは暗くなった森で食べれそうなものを探していた。

とりあえずクロエから渡された怪しいキノコは遠くに投げ捨て、ぼくは少し溜息をついた。


「あ、あのぉ」


「何?今忙しいんだけど?」


「盗賊の仕事じゃないんですか?」


初仕事に緊張半分、ワクワク半分といった塩梅の精神状態であったぼくは尋ねる。


「これも大切な仕事だから、第一あんたにいきなり盗賊の仕事なんて出来る訳ないじゃん、はいこれ袋」


「そ、そうですよね…」


ルナから渡された得体のしれない虫を袋に入れる振りをして逃がす、しかし少々複雑な気分であった。

まぁでもいきなり盗賊の仕事をするのも怖かったし丁度いいかもしれない。

月明りを頼りに森を見渡す、奥の方なんてまるで闇だ、どんな危険な魔物がいるかも分からない。

常に緊張感をもって職務にあたる、慢心はいけない。

改めて気を引き締め、腰につけた唯一の武器のナイフをぎゅっと握りしめる。


「任務終了っ!撤収だ!!」


と思った矢先終わりらしい。

ナイフから手を離し初仕事は幕を閉じる事となる。























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