その7
作戦開始の一時間前、ユウヤはカツヤに呼ばれて先ほどいたテントとは別なテントに来ていた。
「というわけで、今回一緒に行動を共にするメンツを紹介する」
カツヤが指示を出すと、三人の隊員がテントに入って来た。
「あれ……?」
意外なことに、ユウヤは隊員たちに見覚えがあった。その一人、セミロングの女性がユウヤの顔を見て、ぺこりとお辞儀をした。
「あの時は助けていただきありがとうございました! 改めまして自己紹介を。
サキと名乗った女性は、奴隷兵に襲われているところを以前ユウヤが助けた革命軍の一人だった。
「いえいえそんな。それより無事でよかったです」
ユウヤがそう答えると、サキは「おかげさまで」と一言答えた。
「残りの二人も、一度会ったことがあるとは思うが自己紹介を」
カツヤに言われて二人の小柄な少女たちが恐る恐る近寄る。
「……
「……妹のクロハです」
二人の小柄な少女たちは、お互いにそっくりな双子だった。二人とも黒髪のショートで、姉のアゲハは右目を、クロハは左目を前髪で隠していた。
どこかおびえたように暗くどんよりした双子だったが、その様子でユウヤはすぐに彼女たちがこの前学校でぶつかった女の子だと気付いた。
「あ~、あの時の。なるほど、カツヤが面識あるって言ったのはこういうことだったんだ」
今はもう遠い昔のように感じるが、カフェへ行った時にカツヤが珍しく後輩の女の子のことを言及した理由が分かり、納得の表情を浮かべる。
「その、あの時はぶつかってごめんね。怪我とかしなかった?」
申し訳なさそうにユウヤは尋ねるが、アゲハはぶんぶんと首を横に振った。
「そ、そんな、成宮様が謝る必要はありません。私たちのような四級のゴミが一級の成宮様にぶつかっていただけるなんて、逆に光栄です!」
「ですです」
アゲハに続きクロハもびくびくと怯えながら頷く。
「え、え~っと……」
困惑するユウヤに、カツヤがため息をつきながら補足する。
「前にも言ったがこの二人は第二王国からの難民でな、まだ第二王国時代の感覚が抜けきってねぇんだわ。だから相手が高位の権能使いって分かるとこうなっちまうんだよなぁ……」
カツヤの説明中にもおびえる二人に対して、ユウヤはそっと近寄る。
「あの、安心してほしい。僕は第二王国みたいに等級差別とかしないしさ。というかそもそも僕って前まで自分は四級だって思ってたし、そんなに怯えないで、ね?」
優しく諭すように言葉を投げかけるが、二人はまだびくびくしていた。
「わ、私たちにはお構いなく。気遣いなど無用なので」
「だ、大丈夫ですから!」
反論する二人に、ユウヤは何とも言えぬ表情をしてしまった。まだ十五か十六の少女がここまで高位の権能使いに怯えるなんて、よほど第二王国でひどい目に遭ったのだろう。
「……まぁ、第七での生活に慣れればもう少し態度も変わるだろうさ。――それより、そろそろ移動を始めるから心の準備をしておけよ」
カツヤに言われてユウヤは腕時計で時間を確認する。これから始まる戦闘のことを考え、ユウヤは息をのんだ。
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