その5
「えっ、僕が……?」
突然の申し出に、ユウヤは驚く。
「どういう事情があってお前が一級の権能を隠していたのかは聞かない。だが、今俺たちには余裕がない。少しでも戦える人材がいるなら、協力してほしい。革命軍は一般市民に今回の騒動の裏にある奴隷兵の存在を暴露して、一緒に戦ってくれる人を集めているんだが……、やはり中々信じてもらえない。こんな状況だ、お前のような強力な権能が、必要なんだ。頼む」
カツヤは柄にもなくユウヤの前で深々と頭を下げた。側にいた宝田も同じく頭を下げている。
「ま、待って。頭を上げて。とりあえず一つ訂正させてほしいんだけど、僕は権能を隠していたわけじゃない。本当に、自分は四級の権能使いだと思っていたんだ」
「どういうことだ?」
頭を上げたカツヤがユウヤに尋ねる。
「あの時、なぜか突然一級の権能が使えるようになったんだ。多分、ダイヤモンドのように固い氷を生み出して操る権能、なんだと思う。でも、僕自身もこれが一体何なのか理解できていないんだ」
ユウヤの言葉を聞いて、カツヤは不思議そうに首を傾げた。
「ん~とつまり、親に権能のセーフティーがかけられていたってことか?」
普通、権能が発現するのは五歳から十二歳にかけてだが、強力な権能が発現した時に暴走しないよう、あらかじめ暗示や催眠を使って「自分は四級か三級程度の権能しか使えない」と思い込ませることがある。これをセーフティーと呼ぶが、第七王国に限らず連合王国では一定数、自分の子供にセーフティーをかける親がいる。
「う~ん、多分そうなんだと思う。普通なら中学生に上がるころにはセーフティーを解除すると思うんだけど、僕の親は結構過保護だから、高校生までずっとセーフティーをかけ続けていたのかもしれない」
「過保護って、いくら何でもセーフティー外すなら中学生のうちにやるだろ」
「そうだよね。そんな大事なことなら一度くらいは聞かされていると思うんだけど……。それに、氷系の権能にしては右腕の隣に変な手も現れるし、正直自分でも何が何だかよく分かっていないんだ。こんな状態で戦ったとしても、ちゃんと自分の力をコントロールできるかは自信がない。それでも、カツヤは僕に協力してほしい?」
真剣なユウヤの言葉を聞いて、カツヤは腕を組んで考え出す。
「いや、さっき俺に向けて権能を使ったとき、ちゃんとコントロール出来ていただろ。例のでかい氷山を作った時も、奴隷兵だけは身体の芯まで凍らせずに身動きを取れなくするくらいのコントロールはできていたし、問題ないと思う。……もちろん、成宮自身がやりたくないのなら無理強いはしない。これから俺たちが相手にするのは、一国家の軍隊だ。命の保証はない。それでも、俺はお前と一緒に戦いたい。俺はなんとしてでも、この地獄を止めたいんだ」
そう語るカツヤは、いつもの様子からは想像できないくらい真剣味をおびていた。
「……分かった。僕だってこんな非道は許せない。革命軍に協力するよ。だけど一つだけ約束してほしい。この革命に、きっと僕の両親も巻き込まれている。父さんと母さんの安否を、ちゃんと調べて欲しい」
「あぁ、もちろんだ。俺たち革命軍は、無抵抗の市民を攻撃していない。約束する。絶対に成宮の親も見つけ出すよ」
カツヤはそのまま、右手をユウヤの前に出す。
「これから、宜しく頼む」
ユウヤはカツヤの手を、強く握り返した。
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