その5
王都センダイの中心地、センダイ駅。そこから地下鉄でしばらく揺られると、小さな駅に着く。高層のマンションや商業ビルの立ち並ぶ駅周辺を十分ほど歩くと、周囲の建物に比べればややこぢんまりとしているが十分大きめのマンションがある。 このマンションの六階にある一室が、ユウヤの家だ。それほど広くはないが家族三人で暮らすには十分な広さの部屋だ。
「ただいま!」
部屋にユウヤの声が響き渡る。
「おかえりなさい。ちゃんと手洗いうがいをしてね。ご飯できてるわよ」
「もう、子ども扱いしないでよ。それくらいするって」
いつまで経っても子供扱いして来る母だが、いつもユウヤのことを大事に思ってく
れている優しい母だ。
素早く手洗いうがいをすると、キッチンの方へと足を運ぶ。母の料理はすでに完成間近だった。
「おかえり、ユウヤ」
「あっ、ただいま、父さん」
リビングでパソコンを開く父から急に声をかけられ驚く。父は家で仕事をすることが多く、母と一緒に家によくいる。今日もまだ仕事が終わらないらしく、頭をぽりぽりと掻いていた。
「もう、お父さん! もうすぐご飯できますよ!」
「ゴメンゴメン。はは、母さんの料理、楽しみだな。いつ食べても一流ホテルに負けない最高の味さ!」
「ゴマをすっても駄目よ。昨日もビール飲んだんですから、今日はお預けです」
「そ、そんなぁ」
仲の良い証である夫婦漫才を見せつけられて、ユウヤも微笑ましくなる。いつか自分もこういう家族を持ちたいと、ユウヤは常々考えていた。
「本当に二人は仲がいいなぁ。生まれてから一度も喧嘩しているところなんて見たことないや。――さて、僕も準備を手伝わなきゃ」
ユウヤはそう呟くと冷凍庫を開け、中から冷凍食品のパスタを取り出すと電子レンジに入れた。二分後、電子レンジからパスタを取り出して食卓の上に置いた。
「さ、全員そろったことだし食べましょ」
三人が席に着くと、両手を合わせた。
「「「いただきます」」」
家族三人で団らんするいつもの光景。ユウヤにとって、最も幸せな時間だ。
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