第二章 革命
その1
王歴二一○○年 五月二十六日
王都センダイは大都会だが、さすがに野鳥くらいは生息している。窓の外から聞こえるすずめの鳴き声と、カーテンの隙間からさす陽光が、ユウヤに夜が明けたことを告げていた。
「んん……?」
朝起きてすぐにスマホをのぞき込む。すると、大量の不在着信が入っていた。
「な、なんで?」
着信相手はカツヤとは別のクラスの友人だ。不思議に思ったユウヤはすぐさま電話をかけ直した。
「もしもし? なんでこんなにたくさん不在着信入ってるの?」
『寝ぼけた声でなぁ~に言ってんだ。時計見てみろ』
促されるまま時計を見ると、時刻は午前九時ジャストだった。
「何って、九時……、え⁉ 九時⁉」
上杉高校の始業時間は午前八時半、つまり完璧に遅刻である。
「うわっ寝過ごした」
『ははは、やっぱり。ユウヤにしては珍しいな、寝坊なんて。カツヤはしょっちゅうだけど、二人そろって寝坊とか仲良しだな』
「別に仲良しじゃ……、って、え? カツヤも学校来てないの?」
『おう。まぁあいつはいつもの事だろ。どうせ深夜どこかにほっつき歩いて帰り遅かったんじゃねぇの?』
「う~ん、昨日は割と早めに解散したんだけど、あの後どこか行ったのかな。まぁ、いつも通り午後になったら来るでしょ。僕も支度終えたらすぐ行く」
『あいよ、じゃあな』
電話を切ると、すぐさま布団を出て支度を始める。パパっと着替えを済ませて、僅か三十分で支度を終えた。
「あれ、父さんと母さんは?」
もう出かけるばかりの状態だったが、ふと気づいて家中を探す。しかしどこにも両親はいなかった。
「父さんも母さんもどこかに出かけたのかな?」
出かけるなんて話はしてなかったような、とは思いつつ、カツヤと比べれば十分真面目なユウヤはこれ以上学校へ行くのが遅くなってしまうことを恐れ、探すのは諦めることにした。きっと買い物にでも行っているのだろう。
誰もいないリビングをユウヤはぐるっと見渡す。ふと、食卓の上に二匹のクマのぬいぐるみが置かれているのに気付いた。二匹のクマには、それぞれ首元に赤と青のリボンが巻かれている。
「あれ、うちにこんなぬいぐるみあったっけ」
気になってぬいぐるみを取ろうとするが、直後、頭に痛みが走る。
「うっ!」
突然の頭痛に頭を押さえるが、すぐに痛みは治まる。
「なんだろう、片頭痛かな……。今日学校行ったら保健室の先生に痛み緩和の権能使ってもらお」
不意の頭痛に少し機嫌が悪くなりつつ、もう一度あたりを見渡す。やはりリビングには誰もいなかった。
何となく、何も言わずに外出するのをためらったユウヤは、先ほどのクマのぬいぐるみを再度見る。
「いってきます」
二匹のクマのぬいぐるみにそう告げると、ユウヤはマンションを出た。
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