その2
時刻は既に午前九時四十分を回っていた。通勤通学ラッシュの時間帯はとうに過ぎ去っているが、それでも大都会センダイということもあって、路上には多くの人がいた。
遅刻確定とは言え、みんなが授業を受けているのに自分だけのんきに歩いていることに多少の罪悪感を覚えつつ、気持ち早歩きで最寄りの地下鉄へ向かう。
途中、ビルの壁に貼られたチラシにふと目が留まる。チラシには「王国軍新規入隊募集中」と書かれていた。
「(そういえば、ここ最近に強化の儀を受けた人は国王陛下への感謝から王国軍か憲兵隊へ入隊する人が多いって何かのドキュメンタリーで見たような。大沢君もどっちかに入隊するのかなぁ)」
強化の儀に参加すると昨日言っていた大沢を思い出す。今日教室で会ったら、どのくらい権能の等級が上がったのか聞こう、そうのんきに考えていた時だった。――突如「ドンッ」と、何か大きなものが爆発するような音が何度も何度も鳴り響いた。
「え?」
突然の事態にあっけにとられるユウヤだったが、周りの人たちもそれは同様だった。
音が鳴り響いた方を見てみると、王都センダイの中心地、センダイ駅が、黒い煙を出して燃えていた。
「まさか……」
ユウヤの予感は、鳴り響いた警報ですぐに確信へと変わった。
『国家緊急事態警報、国家緊急事態警報。ただ今、王都センダイの主要駅、センダイ駅にて、所属不明の武装集団によって襲撃が行われました。王都に住む国民の皆様は、革命に備えて、すぐに地下シェルターへ避難してください。繰り返します。ただ今、王都センダイの――』
警報の途中で、また爆発が巻き起こる。今度はユウヤのいる場所から少し離れたところにあるビルが爆発した。
「に、逃げろ‼」
爆発に驚いた人々は慌てふためきながらも地下鉄に併設されている地下シェルターを目指して走り出す。ユウヤも同様に、地下シェルターを目指して走ろうとした。しかし――
「うっ!」
再びユウヤの頭に痛みが走った。今度は家から出る前とは違い、長く、強い痛みだった。
『た……か……』
ノイズが入り混じったような声が、ユウヤの頭に鳴り響く。
「な、なんだ……っ⁉」
ノイズ混じりの声に疑問を覚えるも、あまりの苦痛でユウヤの顔が歪み、思考がままならなくなる。ついに痛みに耐えきれず、頭を押さえながら崩れるように地面へ倒れ込んだ。
『た……か……え……』
地面にのたうち回りながら、ユウヤは声を聞く。逃げ惑う人々は、そんなユウヤのことなど気にも留めずシェルターへと我先に走り去っていった。
「くっ……、何、なん、だ……、これ……?」
ユウヤは歯を食いしばるも、痛みで気を失った。
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