216. 何回言わせるの

216. 何回言わせるの




 無事に修学旅行も終わり、いつもの日常に戻る。オレは夏帆と共に部屋で宿題をやることにする。


「先輩!会いたかったですよ!ハグしてキスして押し倒して抱いてください!」


「うるせぇ!しねぇから!」


 部屋に入ってくるなりいきなり抱き着いて来る夏帆。こいつはいつまで経っても慣れないな。


「お前、もうちょっと静かに入ってこれんのか?」


「いいじゃないですか~私と先輩の仲ですし」


 そう言って再びぎゅっとしてくる。本当にこいつは……


「はいはい、わかったから離れろ」


 そう言うと、渋々といった感じに離れる夏帆。そのまま座って勉強を始める。


「じゃあ先輩、分からないところがあったら聞いてくださいね」


「なんでオレがお前に聞くんだよ!」


 オレのほうが先輩だぞ?後輩の夏帆に分かるわけがない。そもそもこいつは自分の宿題すら出来ないんだから。


「そう言えば先輩。修学旅行どうでした?楽しかったですか?」


「え?まぁ……それなりにな」


「またそんな曖昧な返事をして……」


 呆れたようにこちらを見る夏帆。だが本当のことなのだから仕方がない。


「まぁでも、お前と会えなかったから寂しかったかもな」


「はい?」


「だから、お前がいなくて寂しかったなって言ったんだよ」


 何回言わせんだよ恥ずかしいな……。


「せ、先輩……そ、それなら私だって寂しかったんですけど!?」


「はい?」


「私も先輩と会えない間ずっと寂しくて悲しかったんですよ!?だから宿題なんかやめて、今日はハグしてキスして押し倒して抱いてください!」


「うるせぇ!しねぇから!お前は何回同じことを言わせる気なんだ!」


「先輩こそ何度言わせる気なんですか!私は今すぐ先輩に押し倒されたいんですよ!早くしてください!」


「知るかよ!さっさと自分の宿題を終わらせろ!」


 それからしばらくの間、オレたちは言い合いを続けた。それが嬉しくて、またいつもの日常が戻ったのだと思うのだった。

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