215. 最後のターン
215. 最後のターン
修学旅行3日目の夜。黒崎は終始ご機嫌だったけど、なんかいつもと違うような気もする。
「お風呂出たわ。今日はちゃんと着てるわよ?」
「それ言うなよ……」
「あら?彼女がいるのに、昨日の私のバスタオル姿を想像するの?イヤらしいわね?」
「お前な!」
「冗談よ。私はレポートをまとめておくから、神原君もお風呂どうぞ」
そう言われてオレは脱衣所へ。なんだかんだで黒崎とは付き合いが長いが、こんなにも明るいキャラをしていただろうか。それに、普段よりも距離感が近い気がする。
「まあ……いいんだけどさ」
なんにせよ、楽しそうならいいか……。そんな事を考えながら、オレは風呂場へと入った。
そして、そのあとは黒崎のレポートの手伝いをして寝ることにする。明日の予定を話したあと、部屋の電気を落としベッドに入った。
隣にはベッドで横になる黒崎がいる。修学旅行3日目ともなると、流石に疲れが出てくるのか、黒崎はすぐに眠りについたようだ。
「やっぱ美人だよな……」
改めて思うが、黒崎はとても綺麗だ。こうして眠っている姿を見ると、本当に美人だと思う。そんなことを思いながらオレも眠りにつく
「……ん」
ふと目が覚める。スマホの時間を確認すると深夜1時くらいだ。まだ起きる時間ではないので、もう一度寝ようとした時、何かがオレに覆い被さってくる。
「神原君……」
「黒崎!?」
目を擦りながら、オレを見つめてくる黒崎がいた。というか、この状態は非常にマズい!だって今、オレの上には寝間着がはだけて下着姿の黒崎がいるからだ。しかも、抱きつかれているせいで柔らかいものが当たっている。
「おい……起きろって。寝ぼけるにも程があるぞ」
「……起きてるわ。私の最後のターンだもの」
「最後?どういうことだ?」
「私ね……ずっと思ってたの。私は本当は神原君のこと親友としてじゃなくて、一人の男性として好きになってたんだって」
「えっ……」
突然の告白に頭が追いつかない。一体どうしてこうなったのか。そもそも何故、オレなのか……。疑問ばかり浮かんでくる。
「でもね、あなたには夏帆ちゃんがいる。だから諦めようと思ったけど、やっぱり無理だった。このままだと一生後悔すると思って、私は自分の気持ちを伝えに来たの」
そしてオレの唇にキスをする黒崎。
「これは、私からしたの。だから神原君は何も気にしなくていいわ。明日になれば元通り。大親友に戻る……。」
「黒崎……お前……」
「私は雛山さんみたいに可愛くないの。ワガママだし、ずるい女なの。だから、したわ。ごめんなさいね?迷惑よね……」
泣きそうになりながらも、笑顔を作る黒崎。その姿を見たら、胸が締め付けられるように痛くなる。きっと勇気を出して伝えてくれたんだろう。
「ねぇ神原君……お願いがあるの。最後のターンだから……聞いてくれない?」
「黒崎、オレは……」
「いいの……何も言わないで……これは私のワガママだから……」
そして翌日。最終日である4日目の朝を迎えた。外は残念ながら雨が降っている。
「おはよう神原君」
「ああ、おはよう」
「今日から、また大親友としてよろしく頼むわね?それじゃあ、行きましょうか」
そう言って歩き出す黒崎。だけど、その足取りは重いように見える。恐らくだが、昨日のことだろう。
「雨か……」
修学旅行最終日。外は大粒の雨が降っていた。
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