214. 私が勝手に

214. 私が勝手に




 オレと黒崎は京都の街に繰り出す。時間は昼を回っている。とりあえず予定通り縁結びで有名な『白峯神社』に来ていた。


「ここが、白峯神社か」


「神原君は夏帆ちゃんがいるし、あまり縁がないかもしれないけど、相手のいない私には少しでも神様の力を借りたいから。」


 オレは周りを見渡す。さすがは縁結びで有名な神社だ。カップルや家族連れも多い。というか黒崎にそんな相手いるのか?初耳なんだが?


「あぁ……でも意外だが。黒崎好きなやつでもいるのか?聞いたことないが?」


「……いるわよ。好きな人くらい」


 少し照れたような表情で答える。こんな顔もするんだな……。なんか新鮮だ。


「へぇ〜誰だよそれ?オレの知ってる奴か?」


「知ってると思うわよ」


「マジ?ならクラスの誰かか?」


「ヒントあげるわ。私の好きな人は、いつも私のそばにいる人よ」


 そう言って黒崎は笑みを浮かべた。その笑顔はとても可愛らしくて、思わず見惚れてしまうほどだった。


「そいつって……」


「あっ御守り買って行きましょう!修学旅行の思い出にお揃いの御守りでも買わない?」


 誤魔化された気がするがまあいいか。せっかく来たんだし、御守り買って行くとするかな。オレ達は御守り売り場に向かい、それぞれ好きな色の御守りを買うことにした。


「オレは赤にした。黒崎は何色にするんだ?」


「私も赤にしようかな。じゃあこれで決まり」


「ねぇ神原君、お願いがあるんだけどいいかしら?」


「ん?どうした改まって?」


「あのね……手を繋いでくれないかしら?ほら私、付き合ってる人いないじゃない?だからちょっとだけそういうことをしてみたいなって思って……。ダメかしら?大親友のお願いなんだけど?」


 手を繋ぐ!?えっなんですかそれ?今まで黒崎にそんなことしたことないんですけど?どういう風の吹き回しだ?


「だって夏帆ちゃんがいたら、このお願い聞いてくれないでしょ?」


「いや……そうなんだが……。」


「なら。こうすればいいかしら?」


 そう言うと黒崎はオレの手を握り歩き出す。


「黒崎!?オレは繋ぐなんて……」


「これは私が勝手に繋いだの。だから神原君は何も気にしなくていいわ。」


 強引なんだが……。こうしてオレは、黒崎の手を握りながら歩くことになったのだが、これ思ったより恥ずかしいな。周りからの視線もあるだろうし。


「ふふっ、なんだかデートみたいね。こういうの憧れていたのよね。神原君は嫌だったりする?」


「別に嫌ではないぞ。ただ……少し緊張するというか、気恥しいというか……。」


 そうしてオレ達は、白峯神社の本殿前に到着した。ここは縁結びの神様を祀る神社なので、男女で参拝するとご利益があるらしい。


「ここで願い事をしたら叶うのかしら?そうだといいわね。」


「あぁそうだな。」


 オレ達はそれぞれ財布から小銭を取り出し賽銭箱に入れる。そして二礼二拍手一礼をして、それぞれの願い事を口にする。隣を見ると黒崎はまだ何かを祈っているようだった。何をそんなに祈ることがあるんだろう?


 そして祈り終わった後の黒崎の顔はどことなく決意に溢れているように見えるのだった。

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