207. 忘れん坊

207. 忘れん坊




 そして翌日。オレは今旅館のロビーで黒崎を待っている。ロビーにいる北山とアイコンタクトをとる。焦るな焦るな。オレに任せろ。


 昨日オレは北山と謎の友情が芽生えた。だから今日は黒崎に事情を話すつもりだ。


「ごめんなさい神原君。待たせたかしら?」


「あっいや大丈夫だ。さてどこに行こうか」


「そうね……嵐山辺りに行きたいわね。トロッコに乗りたいわ」


「お、おういいぞ!」


 トロッコか。黒崎のやつ意外な趣味を持ってるんだな。こうしてオレ達はトロッコに乗るために嵐山に向かうことにする。電車とバスを使い、嵐山にたどり着く。


「ねぇ神原君。嵐山には『竹林の道』や『渡月橋』も有名なんだけどどうする?せっかくだし見ていかない?」


「そうだな。じゃあ行くか」


 オレ達2人は嵐山の中を歩いていく。なんか黒崎って……やっぱり美人だよな。


「ん?どうしたの神原君。私の顔に何かついてるかしら?」


「えっ!ああいやなんでもない」


 危なかった。見惚れてたなんて言えないからな。そんな感じでしばらく歩いていると目の前に大きな橋が見える。渡月橋だ。


「渡月橋は桂川にかかる橋で、京都屈指の観光名所よ。それにこの橋の上からの景色はとても綺麗よ」


 それから少し歩きオレたちは渡月橋の真ん中まで来た。


「でもなんで黒崎はこの嵐山に来たかったんだ?」


「それは……内緒よ」


 黒崎は悪戯っぽく笑う。なんだその顔可愛いすぎだろ!なんか……親友じゃなくて疑似恋人になってるかこれ?まぁいっか。とりあえず今はこの時間を楽しもう。


「あら?雨が降ってきたわね……」


「マジか!?傘持ってきてないぞ……」


 すると黒崎はバッグの中から折り畳み傘を取り出す。


「そんなことだと思ったわ。ちゃんと持ち物にあるのに。ほら入りなさい。風邪ひくわよ?」


「お、おうありがとな」


 黒崎と一緒に1つの傘に入りながら歩く。近い……。めっちゃ近い。なんか良い匂いするし……。オレの心臓の鼓動が早くなる。こうして雨の中嵐山を二人で歩くのだった。

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