第32話 男性棟へ
「ティアナは、元の居住区の方が、ここよりも断然好ましかったのね。だったら、今のこの状況は辛いかも知れないわね......」
えっ......?
リゼットは違うの......?
「聞いていい? リゼットは、もしかして、ここの方が気に入ってるの?」
だって、ここには、仲良しの友達も家族もいないのに......
「もちろんよ! 私は、ここに来られて良かったと思っているわ! じゃなきゃ、私は、隊長と知り合ってなかったもの!」
うそっ!
家族や友達よりも、たった1人の隊長だけの方が、リゼットの中では断トツって位置にいる感じなの?
「隊長だけじゃなく、ティアナっていう友達も出来たし」
「友達......リゼット、私を友達と思ってくれているんだ! 嬉しい!」
あっ、何だか、気のせいか、リゼットのペースに乗せられた感じがする!
「私、元の居住区がキライだったわけじゃないのよ。でも、何というか、毎日が同じことの繰り返しで、つまらなかったの......」
同じ事の繰り返し......
それは、ここでも同じなんじゃあ......?
ううん、そんな事は全然無かった!
むしろ、ずっとハラハラして心臓に悪い時間が続いている!!
私、絶対、元の居住区に居た時よりも、寿命が随分縮んだと思う!
「でも、ここって、特に戦闘隊って、男社会というか、何だか、すごく物騒だから! リゼットは、怖くないの?」
「怖くなんか無いわ! いつでも、隊長がいてくれるし! 生きていくのに食料を獲る事は不可欠よ!」
確かに、食べ物が無いと生きていけないけど......
今までの居住区では、スーパーとか行ったら、簡単に手に入ったいたのに、こんな風に、自ら狩猟して、捌かなきゃならないなんて!
外見から、誰よりもすごく繊細そうに見えるリゼットが、意外にも、戦闘隊の生活に早く溶け込んでいる。
私なんて、いちいち、元居た居住区での生活ぶりと比べたりして、なかなか馴染めないでいるのに!
やっぱり、リゼットにとっては、それくらい、隊長への恋心が大きいって事なんだよね。
私には、そういうのって理解し難いんだけど......
でも、私も、リゼットみたいに夢中になれるような相手が出来たら、気持ちは変わるのかな?
ここでの生活の方が楽しく思えて来るようになるのかな?
何だか、今の私からは信じられないけど、そういう気持ちになれる時が私にも訪れるとしたら......
そもそも、私が、それほどと想えるくらいの相手とは、いつ巡り逢えるのか疑問なんだけど。
だって......
元の居住地の頃から、友達と一緒になって、ほのかに芽生えていた恋心。
ウェイドは、元々恋人がいた人だけど......
こっちの居住区に来る事になって、恋人と引き裂かれて未練タラタラだったのに、リゼットを見た途端、気持ちが移った過程をしっかりと目の前で見せられて、かなり失望したし......
そのウェイドを大人にして、軽薄な感じにしたような美形のエリックが同じグループにいるけど、私の失態を逆手に取るような、いやらしいくらいあざとい性格しているし。
しかも、そのエリックに呼ばれて、これから、私達には禁則地のような男性棟に行かなきゃならないなんて......
エリックが、あんな大人げない事を言い出す人とは思わなかった!
ホントは、あの程度のかすり傷くらい、大の男なんだから、痛くも痒くも無いでしょうに!
自分の部屋に呼ぶなんて!
大体ね、仕事終わった後なのに、また同じ顔触れに会いたいなんて思う?
私は、絶対、会いたくないんだけど!
あっ、リゼットは友達だし、別枠だからいいの!
もしも、そのせいで、監視に見付かって訴えられでもしたら、エリックのせいだから、責任をしっかり取ってもらわないと!
リゼットも隊長の部屋探しに行く気満々だし、取り敢えず、イヤな事はさっさと行って片付けてこなきゃね。
女性棟は1棟だけでこじんまりとした木造なのに、男性棟は大きなマンション型の建物が4棟も有り、造りも鉄筋で頑丈そうな感じ。
まあ戦闘隊の男性メンバーなんて、荒々しそうなのが揃ってそうだから、女性棟のようなヤワな造りだと、アッと言う間に廃墟になってしまいそうだしね。
エリックの部屋は、3棟の3階の3号室で、ズルイくらい覚えやすかったから、メモしなかった。
「私、このままエリックの部屋行くけど、リゼットは、どうする? 1人で隊長の部屋を探す事にする?」
リゼットって単独行動が苦手そうなイメージだから、私と一緒にエリックの所で用が済んだ後、面倒だけど一緒に隊長の部屋を探すって事になりそうかな?
2人部屋だと思うから大丈夫とは思うけど、出来ればリゼットも一緒の方が、危ない目に遭わずに済みそうだし、それが無難かも!
「女性が2人で男性棟をうろうろしていると、目立つから、私は1人で行く事にするわ」
えっ、意外でしかない!!
リゼットは1人で、男性棟をうろつくのは、平気な人だったの?
......それなら、私だって、別に平気だけど!
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