第31話 負い目が有るから
エリックの卑怯者!!
私が誤ってつい負傷させたからって、そういう弱みにつけ込んで、自分の部屋へと誘惑してくるなんて、ヒドイ!!
まあ、そういう奴だとは、思っていたけど......
思ってはいたけど、ホントにそんな言動に出るなんて、とんでもないゲス野郎だ!
でも、考えてみたら......
エリックの部屋へ
女性の棟が二人一部屋って事は、男性棟だって、もちろん2人部屋のはず!
男女間で、そんな差別無いはずだから。
差別されていたら、ズルイし!
さすがに隊長という身分になれば、1人部屋を与えられているかも知れないけど、エリックとかアーロンのレベルの人材だったら、多分二人一部屋に違いない!
いくら女に手が早いと噂されているエリックでも、その場にルームメイトがいるのに、その目の前で、私に手を出すとかって無いだろうし......
かすり傷とはいえ、足も負傷しているんだから、嫌がる私に対して、そんな無理矢理なんて行動に出ないよね?
銃を持って行くのが一番安心だって分かっているけど、残念ながら、任務中以外は所持禁止だし。
隊長がいないと、弾がどこに飛ぶか分からないし......
「ティアナ、本当に行くの? 男性棟に......?」
制服から室内着に着替えている私に、心配そうに声をかけて来たリゼット。
「うん......エリックと約束したから」
相手グループの関わりの無い相手とかだったら、スルー出来たかも知れないけど......
エリックは同じグループ内の人間だから、これから先の仕事中、グループ業務に支障をきたす事が無いようにありたい。
「ティアナって、男性棟に行った事有るの?」
唐突に、リゼットってば、なんて質問してくるの?
「私が、まさか! リゼットは?」
もう既に、私が寝ている隙にとか狙って、まさか隊長の元に出かけて行ったりしてないよね?
「もちろん無いわ! だから、ティアナが無事戻って来られるか不安......」
「そんな~、多分、大丈夫! エリック、怪我しているし」
エリックだって、同じグループ内のメンバーとは、仕事中に気まずく過ごしたくないはず。
「でも、ルームメイトも男性だし、戦闘隊員達って強そうだから」
リゼットが言わんとしている事は分かる。
負傷ったって、足のかすり傷程度のエリックと、もしかしたら見知らぬルームメイトの男性が、2人がかりで攻めて来たら、私1人じゃどう考えても太刀打ち出来ない。
そんな事にはならないという保証は全く無いかも知れないけど、でも怪我をさせた手前、エリックの誘いには断れなかったし、そういう卑猥な目的では無いと信じたい!
「リゼットが心配してくれるのは当然かも知れないけど、私には、エリックに私のせいで怪我をさせてしまったという負い目が有るから、そんな
「私も一緒に行きましょうか?」
気持ちはありがたいけど......
それはそれで、かえって男達を
私1人で行ったら大丈夫そうでも、リゼットも一緒だと、男性棟の男達が発情しそうだもの!
「ううん、1人で大丈夫よ! ありがとう、リゼット」
リゼットって、本当に優しい!
こんなに私の事を心配してくれているなんて!
「でも、行くわ! だって、私も、隊長の部屋とか把握しておきたいから」
えっ、優しいと思ったら......目的は、それだったの?
私の為というより、リゼット自身の為だったんだ!
まあ、それなら、別に私が申し訳ないって遠慮する事も無いもんね。
「リゼットが、そうしたいなら、私はどちらでもOKだよ! まあ、こんな機会でも無かったら、そうそう、男性棟になんか足運ばないしね」
「嬉しい! 是非一緒に行かせて!」
リゼット......本当に一途というか、素直というか。
こんな風に絶世の美少女から想われたら、男の人としては、嬉しく思えないわけ無いよね。
まして、隊長は、常日頃から、リゼット
「リゼットは、じゃあ、戦闘隊員に配属されて、願ったり叶ったりなんだね~!」
「ええ、もちろん! それに、隊長とはグループまで一緒になれたから、もう嬉しくて!」
隊長とグループが一緒になったのは、隊長自身が是非にと推したからだって、リゼットは知らないんだよね。
どうしよう......?
私は、その事を伝えるべきなのかな?
でも、直接、隊長本人から聞いたわけじゃないし、そんな不鮮明な事をリゼットに話して、ぬか喜びさせるのは良くないよね。
「ティアナは、どうなの? 戦闘隊員に配属されて、不満そうに見えるけど、清掃隊の方が望みだった?」
そう、リゼットは相手に対して、意外とストレートに尋ねて来る事が多い。
そして、その度に、私はビクッとなってしまっている!
「戦闘隊うんぬんより、私、こちらの居住区に来る事自体が、イヤだった! ずっと仲良くして来た友達とも、優しかった家族ともお別れしなきゃならないと急に知って、本当に辛くて、信じられなくて、何度も泣いた......」
ここに来る前、自分だけが前世を覚えていなかったという衝撃の事実から、何とか思い出そうと足掻いた時間が思い出されてきた。
もう、それだけで、涙出そうになってくる!
私が大好きだった人達とは、もう永遠に会えないかも知れないんだから!
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