第28話 リゼットの想い

 リゼットの言葉に、水筒から飲んでいた水を思わず吹き出しそうになった。


「えっ、ちょっと待って! もしかして、リゼットって......」


「私、実は......ここに向かっている時からずっと、隊長の事が好きだったの」


「え~っ! 隊長って、あの隊長だよね? えっ、他の隊の隊長とかって、わけじゃないよね?」


 私に告られたわけでもなくて、相手は隊長なのに、私まで動揺せずにいられないんだけど!


「もちろん、隊長のジェイクよ。いつでも、私を守ってくれていて、優しくて、頼りがいが有って! あんな紳士的で素敵な男性は、今まで、私の周りにいなかったの......」


 そりゃあ、隊長みたいな人が、あっちこっちに量産していようもんだったら、私が非常に困るんだけど!


 リゼットがまさか、そんな目で、隊長を追っていたなんて......

 驚き以外の何ものでも無いんだけど!

 

 大体、私なんて、隊長の名前がジェイクだったって事すら、すっかり忘れていたのに!

 リゼットは、あの朦朧とした状態でも、その事を認識出来ていて覚えていられたって事は、やっぱりそれは、隊長への恋心ゆえなのかな?


 そういえば、隊長だって、いつもリゼットを人一倍目をかけて、熱い眼差し向けていたじゃない!


 という事は、2人は両想いなんだ!

 私が、隊長のペアなんて事に気付かずにいたら、2人は当然の成り行きのように結ばれようとしていたんだ!


 いや、待って!


 私がペアでも、別にそれは、恋愛面でのペアじゃなくて、あくまでも仕事面でのパートナーというだけ!

 私生活で、その2人が恋愛していても、私は、そこに口出しする筋合い無い!


「私としては、もしもそういう事が可能なら、喜んで、ペアという立場をリゼットに代わってあげられたらと思うけど、それは多分出来ないんだと思う。それに、私って、隊長がいないと、取り柄が何一つ無いヘッポコみたいだから」


「ううん、まさか! 私、隊長とペアになりたいとか、ティアナと代わってもらいたいなんて思ってないわ」


「そう? それなら、良かった!」


 そんなよく分からない事なんかで、せっかくルームメイトになったリゼットに恨まれるなんてイヤだもの!


 それにしても、まだ信じられない!

 だって、まさかリゼットが、隊長を想っていたなんて......


 あの隊長だよ!

 一体全体、どこに、好きになれる要素なんて有るのだろう?


 それは永遠の疑問になりそうだけど......


 とりあえず、そうと知ったからには、私は、2人の恋路の邪魔をしないように、極力離れて......

 なんて気遣いしようかと思ったけど......


 考えてみたら、元々、リゼットは隊長の横に寄り添っていたし、私は、わりと離れて行動する事が多かったから、それは全く問題無いと思う!


 リゼットは、私の同期であり、同じグループの仲間であり、ルームメイト!


 唯一の大事な同性の友達なんだから!

 

 友達だよね?

 そう思っているの私だけじゃないよね?

 

 うん、多分、リゼットから敵意なんて感じさせられたこと無いし、そこは大丈夫......と願いたい!


 だからこそ、リゼットになるべく、協力するように心がけないと!


「ティアナは、隊長の事、どう思っているの?」


 その前まで話が途切れていたから、考え事しながら、また水筒を口に運んだ瞬間に、たまたまなのか、狙っていたのか分からないけど、リゼットがそんな質問し出したから、また吹き出しそうになってしまった!


「えっ、どうって......? 隊長って、あの隊長でしょう? 別に、好きとかなんて気持ちの事だったら、無いから! うん、私は全然、そんな気持ち無いから! 安心して、リゼット!」


「本当に、全く、隊長の事を想ってないの?」


 私の言葉をすぐに鵜吞みには出来ない様子のリゼット。


「ホントにホント! 信じて! いつの間にか、勝手にペアなんて事になっちゃっているけど! 仕事の時だって、よっぽどの事が無い限り、隊長とペアだなんて事、意識しないで、これからだって過ごすつもりだし」


 隊長だって、きっと、そんな束縛なんてイヤだと思う!

 お互い、極力、そんなペアなんてしがらみからは解放されていたいよね!


「そうなの......? 隊長は、あんなに素敵な人なのに......」


 えっ!

 ステキ......だろうか?

 あの隊長だよ~!


 見た目だったら、ウェイドとかエリックの方が、断然ステキで好みなんだけど!

 まあ、価値観は人それぞれだから、そこは深追いしないようにしなきゃ。


「私には、そうは思えないな~! うん、ホントに! だから、もちろんリゼットに協力してあげる!」


「本当に協力してくれるの? 嬉しい! ありがとう、ティアナ!」


 こんなに素直な感じで喜んでもらえるなんて......

 リゼット、ホントに隊長の事、かなり好きみたい!

 

 隊長だって、その気ムンムン伝わって来るし!


 ところで、こっちの居住区の人達も、こういう相思相愛の男女の場合は、結婚という形態をとるのかな?


 それじゃあ、リゼットと隊長は、いずれは結婚?


 なんか、ごく身近な2人が結婚するって、想像もあまり出来ない、想像力の乏し過ぎる自分。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る