第26話 苦手な存在
挨拶は、やっぱりレディーファーストで、私から先にすべき?
向こうから先にする様子が無さそうだし、やっぱり私からなんだよね?
ナンバー呼びから、名前呼びに改めてもらった時も、隊長が一番最後に名乗っていたし、目上の人が後というのが、当たり前なのかも知れない。
「ティアナです、よろしくお願いいたします」
「僕は、エリック。ふ~ん、なるほど、こっちの新人は、素朴な感じだね~」
素朴って......!!
その言葉、リゼットと比べてって意味だよね?
そりゃあ、リゼットのような超美少女と比べられたら、私なんか紛れも無く、ただの素朴な新人ですよ!
「あっ、素朴っていうのは、褒め言葉だよ~、もちろん! 僕は、キレイな子は、ハーレムでも見慣れているし。新人のリゼットもかなりの美少女だから、別にそこには、あまり興味無いんだな~!」
何、この人?
到底、褒め言葉に感じられないような事を言っておきながら、それを褒め言葉と称して弁明している感じするんだけど......
ハーレムの美女達や超美少女のリゼットと比べられてしまう私って、なんだか可哀想過ぎない?
「エリック、ティアナには手を出すなよ! なんせ、隊長のペアだから!」
軽いノリのエリックの言動をアーロンが制した。
アーロン、たまには良い事を言ってる......?
のか分からないけど......
一応、私に加勢してくれているつもりなんだよね?
「えっ、君が隊長のペア? マジか?」
明らかに驚きを隠せないエリック。
「......って言われてますけど、特にそんな実感は無いです!」
今でも、まだ疑わしく思っているから、キッパリと言い切った。
たまたまあのタイミングで、そういう何か法則的な力が働いただけのような。
でも、その法則的に感じさせられる力こそ、ペア由来なのかも知れないけど。
「あはははは! なんか、君って、ユニークだね!」
その言葉......友達のマデリンとプリシラによく言われていたっけ。
こんな所で、また耳にする事になるなんて。
それも、このエリックという、いけ好かないような男の口から。
「実感無いのは、俺とて否定できないが。まあ、そういう事だから、お前のターゲットからは外しておけよ」
隊長が、冗談混じりのように言った。
エリックのような、女なんてよりどりみどりな感じのイケメン男が、そんな美女がわんさかいる環境で、地味な私に興味持つわけないのにね、隊長ったら、大袈裟な!
「そうは言われても、僕って、
ニヤリと笑って、私の方を見つめているエリック。
えっ、嘘でしょう?
私、今まで、男の人に、こんな熱視線を送られた事なんて、皆無だったんだけど。
せっかくの目の保養なのに、つい、顔背けてしまいたくなる。
そんな免疫の無い私に、こんなイケメンからの誘惑って、好きなタイプじゃなくても、しんどいんだけど......
「エリック、それお前の悪い癖だよ」
アーロンが笑ってけしかけたけど、私は穏やかでいられない。
「けどさ、ほらっ、隊長だって、お気に入りをご指名して傍に置いているんだから! 僕だって、新人の女の子1人侍らせても良いだろう?」
隊長には届かないくらいの声量で、アーロンと私に伝えたエリック。
お気に入りって、リゼットのこと?
隊長、リゼットをご指名して、このグループに入れたんだ。
居住地に来るまでの隊長の言動からして、当然といえば当然かも知れないけど、そんなふうに特権を乱用しちゃって、イヤな感じ!
リゼットだって、そういうのどう思っているんだろう?
隊長の横に守られているような感じで、あの時から今も一緒にいるけど。
「リゼットは特別さ。今まで、そんな完璧なまでの治癒力を発揮できる人間なんていなかったからね。そういう人材は、喉から手が出るほど欲しいわけ」
私に気を遣っているとも、隊長を庇っているようにも捉えられるアーロンの言葉。
リゼットをご指名したのは、能力的なものばかりじゃなくて、絶対、外見的なものも有るのに!
「まあね、脅威の治癒力だそうで、確かに隊長の気持ち分からないでも無いよ。まして、あのルックスときたら、他のグループからも引く手あまただっただろうに」
エリックもリゼットの治癒力の噂を既に耳にしているらしい。
「エリックも、リゼットが一緒のグループで嬉しいですよね? 私なんかに構わず、リゼットを隊長と奪い合っていたらいいのに」
「まさか! そりゃあ、リゼットは新人の中はもちろん、全隊員の中でもトップクラスの可愛らしさだと思うよ! でも、あの隊長を敵に回してまで、そんな事は望まない!」
隊長がリゼットにご執心というのも、エリックは承知済み。
でも、私だったら、ペアとはいえ、隊長は感心向けていないから、狙いやすいって事が言いたいんだ。
「私なら、いざという時に戦闘能力を発揮さえすれば、隊長は満足で、他はどうあっても全くお構いなしだからなんだよね......」
何だか、私の立場って、すごく空虚な感じ。
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