第25話 新しい仲間

 私にしてみれば、隊長のような淡白な態度の方こそ、よっぽど疑問なんだけど!


 それは、十分じっくり考えるに足りる事だもの!!


 だって、ペアなんて.....


 そんな響きを聞かされただけでも、何だか、赤面してしまうのは私だけ?


 例え、恋愛方面の要素が皆無だとしても、隊長と一緒にいる時間は、家族とかよりもかなり長いって事なんだから!


 それが、この先ずっとだよ~!

 それじゃあまるで、仕事の上での結婚みたいなものじゃない?


 なんで、私だけ、そんなよく分からないペアを組まされる状況になってしまったんだろ......?


 物知りっぽいアーロンだって、審査員達だって、前例が無かったような感じで、私達の事に驚いていたし。

 そんなふうに、例えペア行動のおかげで私の能力がアップしてくれても、単独になった途端に役立たずなんて、何だかすごく情けないし......


 私に比べたら、隊長はいいよ!


 最初っから、抜きん出るような色んな能力が開花していた人だから。

 今更、更にそれに1つ加わるかも知れないなんて......


 何だかズルイ!!

 

 私なんて、唯一の取り柄のような射撃の腕前だって、隊長とペアでいる時に限定って感じでしか能力が発動できないんだから!


 同じペアなのに、この歴然とし過ぎている差は何なの?


 隊長の持つ能力を半分くらい、ううん、1つでもいいから分けてもらいたいくらいなのに......


 私には、まだ気付かない隠された能力とかって無いのかな?


 これから、戦闘隊に入って、射撃以外でも、何か他の取り柄とか見付かるといいんだけど......


「まだ色々考えているんだね、ティアナ」


 アーロンが顔を覗き込んで来た。


 火の見張り番の時に弱み握られビクついていたけど......

 私、もうウェイドの事は何とも思って無いし、戦闘隊での所属も離れちゃったし、アーロンなんて怖くないから!


「他の人達はいいですよね! ペアなんていう厄介なしがらみ無く、自由に仕事が出来て!」


 アーロンだって、口数少ないけど、頭の中で、色々考えている人間だよね。


「そうかな? 僕だったら、例えペアでいる時だけの発動だったとしても、並外れた能力が得られるというのなら、喜んで手にしたい!」


 そんな風にアーロンが思っているなんて、意外だった......


「アーロンは、ペアにならなくても、頭脳明晰なんだから! 1人で十分でしょう?」


「頭脳班は、戦闘隊と共に行動するから、彼らの足を引っ張らないように、これでも必死なんだよ」


 そうだったんだ......

 そんな風には思えないくらい、アーロンはいつだって頭で分析して、俊敏に行動出来ているから、てっきり余裕なんだと思っていた。


「だとしても、必死そうに見えないようにすること自体、私には真似出来ないです!」


 今まで、アーロンは、戦闘隊の中で中核のような位置かと思っていたけど......

そうなるまでには、色々苦労して来たのかも知れない。


 私は、戦闘隊に行く前から、通常モードの自分のへっぴり腰の事ばっか頭に有って、隊長がいなくなった途端、何の取り柄も無い自分に戻るのが悔しく思えていたけど......

 やっぱり、努力は怠らず前進してゆくしか無いのかもって思えるようになった!


 良くも悪くも、私のペアという名目上、ずっとそばに隊長がいる!


 隊長は、モチロン、私の良きお手本となってくれる!

 それに、このままずっと行動しているうちに、いつかは、私が一緒にいる事で隊長にも、何か物凄い恩恵が現れてくるかも知れない!


 そう、この私が一緒にいる事に感謝したくなるほどの!


 私は、この目で第一目撃者となって、得意気にしていられる立場になるかも知れないのだから!

 

 幸い、私はまだほんのヒヨッコのような立場だ。


 この立場でいられるうちに、銃撃以外の技も少しずつ身に付けて、周りから隊長とのペアという視線で見られても、引けを取らないような自分に近付いて行こう!


「戦闘隊は7つのグループに分かれて行動しているが、ティアナはもちろん、俺と同じAグループに所属してもらう! 既に顔馴染みのアーロンとリゼットも一緒だ」


 居住地来るまで同行していたメンバーのうち、ウェイドだけがいない状態なんだ......


 まあ、隊長は、リゼットが大のお気に入りだから、手放すわけないもんね!

 あれっ、その代わり、見かけない顔が1人だけいる。


「ティアナは初めてだったな! 俺の補佐役のエリック。奴は、優れたハンターだから見習うように! ただし、女狩りも得意だが......」


「隊長、そんな紹介の仕方は無いですよ! 僕が手当たり次第、手を出しているような聴こえの悪い感じがします!」


 笑いながら軽い調子で言ったエリック。

 なるほど、ウェイドをもっと大人にしたようなイケメン!

 ウェイドと離れた今も、こんな目の保養になる人物が、ちゃんと自分のグループにいてくれるなんて!

 私、やっぱり、こちらの世界に来て、ラッキーだったのかも知れない!


 ただ難点は......

 ウェイドと違って、自信過剰気味の態度が鼻につく感じ!

 正直、苦手な感じかも......

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