第23話 共に行動しないと意味が無い
審査員の言葉で、隊長は不可解そうな顔で、私と審査員達の顔を交互に見ていた。
「何の事を言っているのか、よく分からん! そもそも、ペアとは何だ?」
「これは、本当に滅多に無いパターンなので、我々も初めて遭遇しました。1人だけでいる時には非力でも、男女2人揃うと、並外れた腕前になるという組み合わせがごく稀に存在していると噂では聞いていました。№32541は、どうやら、その珍しい女性のようなのです! だから単独でいる時には、全く威力を発揮しなくて、出来損ない感が否めません。ところが、ペアとなるあなたが一緒にいるとですね、先刻見ましたように、あのずば抜けた射撃が出来るようになるのです!」
審査員が、私に話してくれた時より、ずっと分かりやすく丁寧に隊長に対して説明しているのが、何だかウケたんだけど。
なるほど、そういう事なんだ......
「それは、たまたまじゃないのか? 本当に、俺がこいつの相方じゃないと、あの腕前は発揮しないのか?」
「まあ、疑うのも無理は有りませんが、良かったら、ここに来た他の同行者の男性で試してみても構いませんよ」
他の男性っていうと、あとはアーロンだけ。
唐突に私とペアと言われても、疑問しか起こらない様子の隊長は、念の為、すぐにアーロンを呼んだ。
「何事でしょう、隊長?」
「審査員達が、俺とティアナがペアだと言い張るのだ! ところで、お前は、ペアって知っているか?」
滅多に無いケースだと聞いていた隊長が、まず、アーロンに確かめた。
「確かに、聞いたことは有りますよ。実際に、ペアという男女に出会った事は有りませんが」
「それで、ちょっと試したいのだが......お前、審査員の方で、ティアナの射撃を見ていてくれ」
隊長に指示され、審査員席の方へ向かったアーロン。
隊長は、また外へと出て行った。
......って事は、また私、撃たなきゃならないの?
え~っ、さっきので最後だったはずなのに!
こんな事ばっか、何回繰り返すの?
埒が明かな......くはないのかも
仕方ないか......
「さあ、撃ってみて」
アーロンに言われて、またさっきと同様に銃を握った。
審査員達の言っている事は隊長がいた時点でも、まだ信じ切って無かったけど、本当に今回ので、ハッキリしたのかも知れない。
同じように撃ったはずなのに、また私の腕前は、ヘッポコだったのだから......
「随分とまあ......何というか、僕達が目にしていたのとは、かなり違う腕前だな」
アーロンも、以前見ていたのとのギャップに驚いていた。
「で、どうだった?」
隊長が、また頃合いを見計らって戻って来た。
隊長は、よっぽど私とペアである事を避けたいのか、アーロンに問い詰めた。
「お察しの通り、あの時とは別人のような素人でしたよ」
アーロンが驚きつつも、感情移入せずに言った。
「やっぱり、そういう事なのか! って事は、こいつの腕前を生かす為には、いつも俺に同行させる必要が有るんだな!」
えっ、やっと居住区に着いて、隊長達と離れたのに、戦闘隊に入るってだけではなく、いつも、隊長と一緒に行動する事になるの?
これから、常に一緒って、もしかして、死ぬまでって事?
なんか、よく分かんないけど、そのペアって、私からすると、かなり迷惑な設定に思えて来る。
知らなかったらずっと分からないままで、私は清掃隊なり、どこかに配属されて、何とかそこで適応しようと努力して、それでおしまいだったはずなのに......
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