第22話 ペア
審査員達は、内心面倒臭いに違いないが、隊長の前では、快く承諾していた。
「戦闘隊長直々の申し出とあらば、我々は断れないですね。ただし、このもう1度だけですよ」
隊長には、本当にそんな権限有ったんだ......!
「おい、お前、手抜きしたら、承知しないぞ!」
そう言って、今度は背中をポンと叩いて、審査員達の席の方へ行った隊長。
隊長、やっぱり、私の射撃見るつもりなんだ......
イヤだな~、あのブザマなの見られるの!
どうしたら、狼を仕留めた時のように上手く出来るんだろう?
今回の射撃でも、あのヘッポコが出てしまうのかと思ったら、少し前の審査での腕前が嘘だったかのように、またキレッキレの銃さばきが出来ていた!
審査員一同が、先刻の射撃とのギャップに、しばし唖然としていた。
「だから、俺が言っただろう! お前の適性は、戦闘隊向きだって!」
まるで自分の腕前を披露したかのように、鼻高々で審査員達の横にいる隊長。
「えーと......さっきとは雲泥の差でしたが、さっきの審査のは、本調子じゃなかったという事ですか?」
審査員達にそこまで言わせるとは......
どうなっているんだろ?
ヘッポコと百発百中、どっちがホントの私?
「いえ、あの、緊張していたので......」
なんて、思わず適当に言っちゃったけど......
本当に、これって緊張だけの問題なのかな......?
慣れ......ってわけでも無いよね。
何か、よく分からないけど、複雑な要因が絡み合って成し得たのかも......?
だとしたら、その要因って何だろう......?
さっきと今で、何か違っていた事といえば......
さっきは、ウェイドとリゼットもいて、彼らは審査した後だったけど、今回の審査対象の入植者は、私だけ。
入植者とかの問題じゃなくて、もしかして、隊長?
そうかも......狼の時にも、モチロン隊長がそばにいた。
そうなのだとしたら......
これは、ちょっと確認してみたい!
「あの~、もう1回、撃たせてもらってもいいですか?」
さっきまで、あんなに嫌々やらされていた私が、自らお願いしている事で、審査員達が、意外そうな表情を顕わにした。
「お前、何言い出すんだ? 今の射撃で、お前の腕前は分かったんだから、もういいだろっ!」
隊長には、私の言動が不可解そうだった。
「いいんです! 隊長は、会場から出て、外で待っていて下さい!」
「何、考えているんだ! 俺の目の届かない所で、また下手くそな真似でもしでかすのか!」
「これは、必要な確認なんです! お願いします!」
深々と頭を下げると、隊長も審査員達も仕方なしに同意してくれた。
隊長が会場から去ったタイミングで、私が、もう一度、同じ条件で審査員達の目の前で、射撃に挑戦してみた。
結果は、私の予測通り、ヘッポコ腕前に逆戻り!
「おやおや、またもや手抜きでもしましたか?」
審査員達が怪訝そうな視線を私に浴びせて来た。
「いいえ。私は、3回とも同じように全力で臨みました」
だとしたら......
百発百中になれる要因が有るのならば、やっぱり、それは隊長だ!!
「居住地までの道中でも、あなたの射撃は百発百中と伺ってました。となると、戦闘隊長がいる所でのみ、あなたは実力を発揮出来る状態になるんですね!」
なんか、そう言われると、そうかも知れない気がして来た。
隊長がいる所では、私の射撃は間違えなく百発百中なんだもん!
だからって、別に、嬉しく思えるどころか、むしろ、どうしてこんな事になっているのか、すごく疑問なんだけど......
「ごく稀で、我々も遭遇した事が無かったのですが、一緒に行動する事で、威力が最大限まで発揮出来る男女ペアが存在していると言われています。№32541は、もしかすると、戦闘隊長とペアなのかも知れないですね」
審査員の1人がそう言うと、残りの審査員達も一斉に、私の頭からつま先まで凝視し出した。
えっ、何、急に皆して、私をジロジロと見て来て!
なんかイヤな感じなんだけど......
ちょっと待って、今、ペアって言ったよね?
私と隊長が、ペアって......?
威力が最大限まで発揮できる男女ペア......?
もしかして、私って、毎度、隊長と一緒に行動しないと、この射撃の素晴らしい腕前を発揮出来ないって事?
「どうだった? 納得出来たか?」
納得行かないまま外に出ていたけど、そろそろ戻って良い頃合いと思ったのか、ムスッとしながら隊長が戻って来た。
「納得するも何も......」
私と、この隊長がペアって!
一緒に行動とかって......
どうして、そんな事になってるの?
「№32541は、あなたとペアのようなので、審査員全員一致で、配属先は戦闘隊という事に決まりました!」
外から戻って来てみれば、いきなり訳の分からないような事を審査員に言われ、素っ頓狂な顔をしている隊長。
そりゃあ、そうでしょ!
この場にずっといた私だって、よく分かんないもん!
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