第21話 配属先変更なるか?
その時、シーンとした清掃隊の準備室内に鳴り響いた、ドアのノック音。
清掃隊長が自ら、新人に挨拶に来てくれたのかな?
どんな人だか知らないけど、私、ずっと、その人の部下として、清掃作業をずっと続けていく事になるんだ......
そんな事、全く望んでなんかいなかったんだけどな......
あ~あ、憂鬱!
「開けるぞ!」
なんか聞き覚えが有る、戦闘隊の隊長のように横柄な声と言い方。
......と思ったら、そのはずで、現れたのは、見慣れていた戦闘隊長!
「あれっ? 隊長は、戦闘隊長じゃなくて、実は、清掃隊長だったんですか?」
私、ずっと『清掃』を『戦闘』と聞き間違えていた?
そのわりには、隊長自身の戦闘隊のアピールが半端無かったのに!
なんか笑える!
「何、アホくさい事言ってるんだ! 大体、お前、なんで清掃服着て、ここに居る?」
そんな事、私が一番聞きたい!!
「ホントに、どういう事なんだか、さっぱり分かんないんです! なぜか、私の銃さばきがあまりに下手過ぎて、戦闘隊には、とても入れないレベルで......あれっ、隊長、審査員達からその話、聞いてませんか?」
説明しながら、気付いたけど......
その成り行きを知っているからこそ、隊長が、ここまで足を運んで来たのでは?
「聞いてるに決まっているだろう! そうじゃなかったら、俺がわざわざ、関係無い清掃隊のエリアになんか来るかよ!」
ですよね~!
でも、隊長が来たところで、私の射撃の腕前が上がって、戦闘隊に入れるようなあの百発百中のレベルになるわけでもないんだから!
あの移動中、狼相手に命中しまくってたのは、多分マグレだったのだろうな~。
「私、やっぱり、本当に戦闘隊は無理なんです! さっき、審査員の目の前で、イヤというほど自分でも確認済みですから!」
私が、そう弁明しても、この頑固な隊長は聞き入れる様子などなかった。
「いいから、来い!」
私の腕を掴んで、さっき私が乗って来た、ダサい感じのカートではなく、戦闘隊用のジープに乗せられた。
わっ、ジープ、カッコイイ!
あの簡素過ぎてヤワな感じの清掃隊のカートなんかとは、雲泥の差!
迷彩服も、やっぱり自分の好みだし、このブザマな清掃服よりずっと似合っていたし。
ああ、どうしよう!!
年頃の女の子として、戦闘隊なんて、野蛮なものに入りたくない気持ちも強いのに......
なぜか、この戦闘隊を取り巻く環境に、妙に憧れを感じてしまう、矛盾してしまっている私。
ジープが止まったのは、見覚えの有る建物。
さっき、私達3人の入植者を審査した会場だった。
「えっ、どうして、またここにいるんですか?」
「これに着替えろ!」
これは、さっきまで来ていた迷彩服......
「でも、私は、もう、清掃隊に配属先が決まったから、このグレーの繋ぎを着てないと、規則違反で殺されてしまうかも知れないので......」
「そんな事くらいで、殺されるほど、この世界は野蛮だと思ってるのか?」
「違うんですか......?」
大丈夫なんだ......
でも、迷彩服に着替えたら、審査員達に反感買いそう!
あっ、でも、考えてみたら、清掃隊って、この制服のダサさといい、どう考えても底辺のような気がするから、それ以上、私、落ちる事無いんだと思う!
「つべこべ言わないで、さっさと迷彩服に着替えろ! お前だけ、もう1回、審査のやり直しだ!」
えっ、やり直しって......?
まさか、また、審査員の前で、あのヘッポコ腕前を披露するの?
今度は、審査員だけじゃなく、隊長にまで、それを見られるの?
イヤなんだけど......
1回やったんだから、もう十分じゃない!
私ばっかり、なんで、そんなに何度も、恥をかき捨てしなきゃならない?
「イヤです!!」
「お前は、そんな地味なの着て、清掃隊で一生終えたいのか?」
「地味でも、好みの仕事じゃなくても、仕方ないんです! 私には、取り得なんて1つも無いんですから!」
なんで、今さら、こんな厳しい現実に向き合わされるような事、言わされなきゃならないの?
泣きそうになる......
「俺は、お前の適性を生かせる配属先が、清掃隊とは思わない!」
「私だって、そんな事は思いたくないです! でも、私、きっと他の2人の入植者達と違って、緊張がハンパ無くて、そんな中で、実力発揮出来そうにないから、仕方ないんです! 生産隊の方が良かったけど、人員オーバーだそうですし......」
「生産隊? 何言ってるんだ! お前の適所は、戦闘隊だ! 来い!」
審査員達が、皆、訝しげにしかめっ面して並んでいる所に、また私は戻されてしまった。
そっちも多分、不本意かも知れないけど......
こんな事、私だって、全然望んでなんかなかったのに!
「手間取らせて悪いが、この入植者だけ、再審査を頼む!」
隊長には、その権限が有るとはいえ、ペコリと審査員達に頭を下げた。
私も、隊長の大きな手で後頭部を無理矢理倒されてしまい、頭を下げた状態になっていた。
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