第18話 もう1つのクシャミ後の......
「なんて説明すればいいのかな? ほらっ、そういう禁じられている状況だからこそ、余計に想いが募るっていうの、ティアナは経験無い?」
別に禁じられてないようなこの環境でも、こんな間近でウェイドを目にしたら、十分想いは募るんだけど......
私が想っているそれとは違うのかな?
でも、ウェイドにしてみると、他の女の人を今も恋焦がれているわけだし、初対面と思われている私が、そんな事を言うと引くよね。
「分からなくも無いけど......でも、今はもう私達は、ここの入植者の身分だから、こっちの環境に少しずつ適応してゆかないと」
ウェイドに比べたら、自分って、かなり前向きだったんだと思わされる。
恋人がいた事が何よりショックだったし、今だに去った場所に対して、未練タラタラな事を語られるのも何だかな~って思えてしまう。
美形な事は美形だけど、何というか、性格面で、私が思い描いていたような人と比べてかなりズレているわ~。
うん、残念な感じ。
まあこのウェイドって人は、向こうの世界に残して来た恋人の事をずっと思い続けるってパターンになりそう。
私や友達が目で追っていただけの片想いなんかと違って、相思相愛の相手がいるんだったら、その状態でも無理無いのかな......?
残念ながら、その辺の経験が皆無過ぎて、自分に置き換えて考える事なんて出来ない。
他の入植者達って、どうなんだろう?
こっちの入植者達って、私や隊長の薬飲まない件と言い、ウェイドの禁忌を破った男女交際といい、規律を守らないって人も多いのかな?
「はっくしょん」
私の豪快なクシャミに比べたら、すごく控え目で小動物系の可愛いクシャミがしたと思ったら、リゼットのだった。
さすが、美少女!
クシャミのやり方まで、何だか可愛らしい感じがする。
そのクシャミと共に、リゼットも長い薬の効き目から解放されたようだった。
「ここは......?」
落っこちそうなほどの青いつぶらな瞳を見開いて、周りをゆっくりと見渡したリゼット。
ちゃんと目を覚ましてない時から、美少女ぶりは分かっていたけど、こうして、しっかりと目を開けた時の美少女感は、今までの想像を上回っている!
このグラビアから抜け出したようなオーラの半端無さ、何者なの、ホント?
自分が横にいると、引き立て役以外の何者にもなれなそうな気がして、辛いんだけど......
「リゼット、やっとまともに話せそうな感じになって良かった!」
「あなたは......?」
ウェイド同様、薬の効いている時にし合っていた自己紹介は、てんで無意味だったらしい。
「私は、ティアナ。あなたと同期の入植者なの、よろしくね」
「入植者......?」
キョトンとしながら呟いたリゼット。
そうか、自分達が入植者と呼ばれている事自体、私も、こっち来て知ったんだった。
「向こうの世界で、前世を思い出せなかった私達は、こっちの世界の入植者と呼ばれているらしいの」
「そうか、入植者なんだ......」
リゼット同様、納得している様子のウェイド。
私の話に頷きながらも、その視線は、露骨過ぎるほどリゼットに釘付けになっている!
気持ちは分かるよ!
女の私でさえ、リゼットに見惚れちゃうもん!
でも、さっきまで、未練タラタラだった向こうの世界の恋人とやらは、どうなったの?
こんなにも気持ちを急転換出来るって、ある意味、神業なんじゃない?
リゼットの方はどうだろう?
向こうの世界にウェイドと同様、恋人を残していたりするのか知らないけど、目の前に、これほど美形のウェイドがいても、特に凝視する事無く、今のところ、しっかりと私の方を見ている。
「私と一緒に、こちらに来たのは、この3人だけなの?」
目覚めた直後に、残して来た恋人の事を語ったウェイドと違って、リゼットは、今まで目覚めてなかった分も取り戻す勢いで、現状把握したがっているのが伝わる。
「そう。あそこで、まだ寝ている2人の男は、監視員みたいな感じなんだけど、居住地に辿り着くまでに、私達の適性を見極めて、あの人達に配属先を決められるって事みたい」
「監視員、居住地、適性、配属先......」
その私が話した言葉をオウム返しにしてしまうほど、私達は元いた世界では、そんな言葉とは無縁に過ごしていた。
だから、リゼットの戸惑っている気持ちは、私にもよく分かる。
「えっ、自分達の希望ではなく、勝手に決められてしまうのか?」
愛だの恋だの言っていた暢気なウェイドだけど、さすがに、事の重要さに気付いたようで、声を大にしていた。
「なんだなんだ、騒がしいな! おやっ、お前達もやっと目覚めたか!」
もぉーっ!
ウェイドの大声のせいで、隊長が目を覚ましてしまったじゃない!
アーロンも隊長に続いて起きた素振りをしているけど、この人は、多分、隊長より早く、もしかすると、私よりも早く既に起きていたような気がしてならない!
絶対、アーロンは寝たふりして、私達の会話を聴収していたに違いない!
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