第17話 覚醒

 いつの間にか、なんか明るい......


 気付くと、しばらく寝入っていたみたい。

 

 1度目の大失態で、すっかり信用を失ったせいか、2度目の火の見張り番は、私には回って来なくなっていた。

 おかげで、ウェイドやリゼットほどの睡眠量とまではいかなくても、ある程度の睡眠は確保出来て良かった。


 こんな虫とか沢山いる野原で、布団はおろか敷物すら無くて、他の人との境界線も無く見られているかも知れないのに、自分は、そんな悪環境で眠れるような神経を持ち合わせていないと、ずっと思い込んでいた!


 でも、どうやら、それは思い違いだったって事が分かった!

 人間、どんな状況でも、眠くなったら、睡魔には勝てないんだ。


 皆、まだ眠っている様子だったから、思いっきり、腕を上げて大口開けてアクビした。

 

 すると、目の前の美しい青い瞳が突然開き、私の大アクビを見ている!


 よりによって、それはウェイドだった!!


 不運にも、そのタイミングで、ウェイドが目を覚ましたなんて!


 私の大アクビ顔なんて......

 絶対、ウェイドには見られたくなかったのに!


 でも、大丈夫なはず。

 ウェイドは、まだ薬の効力が続いていて、その瞳には映しているようで、実は何も見えて無いに等しい状態が続いているのだろうから......


 それにしても、本当に、なんてキレイに澄んだ青い瞳をしているんだろう!


 惹き付けられて、目が離せなくなる!


 やっぱり、私が生まれてから出会った男の人の中で、一番の美形と言っても過言でないレベルだから、ついつい見入ってしまう!

 まあ、向こうがまだ正気じゃないから、遠慮無く出来るけど、薬が切れてしまってからは、そうそうガン見なんて出来ないから、今のうちに、目の保養しまくっておかないとね~!

 これほどの美形が私の同期なんて、ホントに私はラッキーだな~!


「あの~、どうして、そんなに見て来るんですか?」


 えっ、もしかして、薬の効力抜けてた......?


 だとしたら、あの大アクビ面もしっかり視界に入ってた?

 その後のガン見はもちろん......


「その~、つまり、いつになったら、薬が切れるのかって、観察していたから」


 変な言い訳しちゃったけど、ちゃんと伝わってくれたかな?


「薬? ああ、そういえば、ここに連れて行かれる前に飲むように指示されていた薬の事だね。あれは、何の薬だったのか、あの後ずっと頭がぼやけて、夢だったのか、現実だったのか分からない」


 ウェイドが、まだ頭がハッキリしてないのか、手を頭に当てている。


「多分、現実だったと思う......」


 ウェイドは、水をかけられたり、くすぐられたり、歩きまくったりした記憶が残っていて、その事を言っているのかも知れない。


「ところで、君は誰?」


 私はこんなに覚えているのに、ウェイドが私の事は丸っきり覚えてないのが、少なからずショックなんだけど。

 まあ、この調子だから、きっと、この美少女のリゼットに関しても、そうなんだろうけど。


「私は、あなたの同期入植者のティアナ」


「よろしく、ティアナ。僕はウェイド」


「うん、知ってる」


 と、勢いで、つい言ってしまったけど、失言だったかも。

 薬飲んでない事、バレてしまうのは良くないかも。

 

「ティアナ、前に、会った事が有った?」


 会っていたというより、私達が勝手に一方的に見かけていただけだから、それを言うのもな......


「私、不思議と薬から覚めたの早かったから、ここでの自己紹介の事もちゃんと覚えているだけ」


 アーロンは騙せる自信が無いけど、ウェイドなら、これで疑われずに済みそう。


「薬の効き目って個人差が有るんだね。ティアナは、以前の住んでいた所にホームシックみたいな気持ちになってない?」


 ウェイドの声で、ティアナって名前で呼ばれる度にドキッとなってしまう!

 こんなに自分の名前を呼ばれるのが、嬉しいって私だけなのかな?

 番号呼びじゃなくて良かった~!

 

「ホームシックは、まだ無いかも。何だか、こっち来て大変な事ばかりで、ホームシックになる暇が無かったってだけかも知れないけど」


 ホームシックより、この粗野で飢えた生活が嫌過ぎて、前途多難過ぎて、心に余裕が無い感じなのに。


 ウェイドは薬から醒めてからの、私に比べたらこんな僅かな時間で、もうホームシックになっちゃってるの?


 私と感性が違い過ぎるのかな?

 それだけ繊細な人なのかも知れない。


「僕の場合、向こうの世界の恋人と離れ離れになった事がキツくて、どうしたら戻れるかばかり考えてしまっている」


 えっ、ウェイド、恋人いたの?


 そりゃあ、恋人くらいいても、不思議は無い容姿だけど......

 でも、男女交際って、私達の年齢はまだ禁じられているはずだったのに、ウェイドが、その法律に従ってなかったっていうのが意外だった。


「ウェイド、恋人がいるって言ってたけど、本当は禁じられているのに、そんな堂々と付き合っていたの?」


 ウェイドに恋人がいたっていうのが、かなりショック......!

 でも、離れ離れになったんだし、元々認められてない禁断の恋だったわけだし、今は、私の方が有利かも!

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