第14話 火の重要性

「火の当番のやる事は分かる?」


 交代の時点でも、まだ目が冴えている様子のアーロンが尋ねてきた。


「なんとなく、隊長の時に見ていたので。薪をたまに火に放り込んで、火が消えないようにするんですね?」


「そう、後は、火事にならないように、物や人が近付かないように気を付けて。まあ、寝相悪いのは、ウェイドくらいだろうけど......」


 寝相悪い組から、私は外された......?

 私は、見張り番だから、除外されたんだよね、きっと。

 ......と思っていた矢先、


「さっきのハプニング、わざとだった?」


 ニヤリと笑って、私の反応を見ているアーロン。


 見透かされている、さすがだ!


 ......という事は、私の気持ちも察している?

 油断ならない男だ、気を付けなきゃ!


「いえ、まさか!」


「そうなのかな? 早く、あの2人の薬の効力が抜けるといいね~」


 私が否定しているのに、全く耳に入って無かったように意味深に言ったアーロン。


「はあ、そうですね」

 

 なるべく動揺しないように返した。


「居住地に着くまでの間、ずっと退屈だな~と思っていたけど、今回は、楽しみが出来て良かったよ。じゃあ、火の見張り番よろしく」


「はい」


 隊長より、要注意人物は明らかにアーロンだった!!


 さすがは、頭脳班だけあって、人の気持ち見抜くという能力に長けていそうな感じ!

 嘘は通じないタイプで、私は苦手だな~。

 涼しい顔して、人の気持ちを弄ぶような感じだよね。

 メガネの奥で何考えているか分からないというか......


 まさか......この事を隊長に、報告するつもりなのかな?

 そしたら、ウェイドに接近するどころか、あの2人に詮索されたり、ひたすらからかわれまくる運命になりそうで怖い!


 私のこんな困っている気持ちも気付かずに、2人とも、相変わらず、グースカ寝息まで聴こえるくらいに爆睡しているし......


 早く、ウェイドとリゼットが覚醒してくれないと、私1人で、いつまでも、あの曲者くせもの2人の相手するなんて、荷が重いよ!


 それに火の当番だって、この2人も入ってくれたら、私は1回っきりで済んだはずなのに......

 入植者の中で私だけ2回も回って来る事になるなんて、面倒臭いな~。


 一体いつまで、あの2人は、能天気に寝続けるつもりなんだろう!

 本来、同期って支え合う仲間のはずだよね?

 その同期の私1人だけが、ずっと覚醒し続けて大変な目に遭わされているというのに、お構いなしで寝続けているって、不公平だよ!



「ハックション」


 う~、寒~っ!


 えっ、火が消えてる!

 私、寝てしまっていた......


 どうしよう!!


 隊長に知らせなくちゃ!


 でも、火が無いと、暗くて、どこにいるのか分からない.....

 私の横は、ウェイドで、確か、その向こう側に寝ていたんじゃなかった?


「隊長~!」


 ウェイドを踏まないように気を付けなきゃ。

 多分、ここら辺って、隊長が寝ていた場所辺りのはずなのに、それと思しき気配が無い。


「俺はここだ! 初めての任務中だというのに、うかつに居眠りして、火が消えた事に気付かないとは、見上げた根性だ!」


 隊長は、寝てなかった!

 火が有った付近から声がしている。


 隊長は、一早く火が消えている事に気付いき、急いで火起こしをしようとしていたんだ......

 私のクシャミより先に起きていたとは、さすがだ!

 

「隊長、風向きが変わったせいか、妙に獣臭がして来ます」


 隊長だけでなく、アーロンも起きていたんだ。

 野宿し慣れているだけあって、少しの気配でも敏感になっているんだな~。


 んっ?

 獣臭......って?


 大変だ、火が無かったら、野獣達に襲われてしまう!


「隊長、早くして下さいっ! 私達、獣達に殺されてしまいます~!」


「急かすな、これでもかなり急いでいる! 全く、誰のせいだと思ってるんだ!」


「ガルルルル」

「ガルルルル」


 空耳ではない!


 獣の声が聴こえている!

 1匹どころじゃない!


「隊長、何か獣が沢山います! 近付いて来てます! 早く、火を~!」


「多分、オオカミかコヨーテだ。あいつらは、夜目が効くからな。アーロン、銃の用意をしろ!」


 隊長は、火起こしをしながらも、特に焦っている様子は無く、アーロンに命じた。


「ティアナは、銃の使い方が分かる?」


 暗い中でも、少し目が慣れたのと、衛星の明かりのおかげで、アーロンらしき人影は分かった。


「私が、そんな物騒なの使えるわけないです!」


 首をブンブン横に振ったが、アーロンには通用しない。


「子供の頃とか、友達とおもちゃの鉄砲で遊ばなかった? あれと同じ要領だから」


 こんな物騒な物を扱い慣れてない私に、ポンと手渡したアーロン。

 私が、本当に、これ使っていいの?

 いつオオカミの襲われるか分からない危険な状況なのに、銃を手渡されてしまった途端、なぜか、私、妙にときめくのだけど!


「弾は貴重だからな、無駄撃ちするなよ、ティアナ」


 私の興奮を感じ取ったように、忠告してくる隊長。


 そんなの、私だって、分かってる!

 オオカミだって、実際に何頭いるのか分からないし、外しまくったら、威嚇にすらならない。

 こんな生活がまだまだ続くとしたら、弾は1発も無駄に出来ない! 

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