第12話 眠れない......
まさか、隊長も薬を飲んでなかったとは......
その隊長が、ここでは脱落せず、隊長という立場にまで上り詰めたのだから、同じく飲んでなかった私にも、隊長くらいにまで昇進の可能性が有るんだ~!
......といっても、こっちの世界では、昇進なんて事に意味が有るのかすらも分からないんだけど。
面倒な事が増えるだけで、メリット無さそうな気がしないでもない。
「隊長は、服薬してなかった事を誰かに見破られなかったんですか?」
「俺がそんなヘマするわけないだろ! お前さんと違って、こっちは、わざと飲まなかったんだ! ちゃんと薬が効いているふりして、隊長達を油断させて、せっせと情報収集していた! なんせ、こっちに入植する時点では、この居住区の情報なんて皆無だったからな! 自分が、どんな所に行くのか、早く知りたい気持ちと、ここでの覚悟を決めていく気持ちが強かった」
隊長は、私と違って、ヌケて無い事を主張したいらしい......
まあ、顔付きからして、見るからに好奇心旺盛そうだもんね~!
確かに、これから住む場所についての情報は、早くゲットできるに越した事ないけど、それが絶望的な感じだったら『まだそんな事、知りたくなかった~!』とか思えるのでは?
「正直なところ、隊長は、薬飲まないで、ずっと正気でいられた事は、正解だったと思いますか?」
こんな事を聞いても、隊長は答えてくれない可能性の方が高いかも知れないけど、私の今の状況って、隊長のその時代と酷似しているわけだし......。
「まあ、薬飲んでいたらラクだったかもと思える事も何度か有ったが、それでも、真実をこの目で確かめたかったから、俺の場合は、飲まなくて大正解だった」
「薬飲んでいた方がラクだと思える事が何度も有るんですね、この先も......」
「おっと、口が滑ったかな~? まあ、聞かなかった事にしといてくれ」
もう既に何度も、薬飲んでいた方が良かったのかもと思える事が有ったというのに、まだ待ち構えていそうで気が気じゃないんだけど......
それよりも、猛烈な睡魔でも襲って来ない限り、私、ここで、眠れる気しないから、先に火の見張り番をしておいた方が良さそう。
「あの~、火の見張り番って、私の順番は次ですか?」
「いや、次はアーロンだから、寝とけ!」
やっぱり、ウェイドやリゼットが除かれて、私は3番目になるわけだ。
そんな寝とけって言われて、
『はい、では寝ます』
なんて簡単に眠れるなら、今、私、起きて、隊長と会話なんかしてない。
「私、ちょっと眠れそうにないから、順番を次とか、何なら、今でもいいんですけど」
「そんなの、お前さんの都合でコロコロと変えられるか! つべこべ言わず、とにかく休んどけ!」
そう来ると思ってたんだよね~!
私だから、こんな邪険に扱われてしまうけど、これが、リゼットの頼みだったら、ホイホイ聞いてあげるんでしょう?
はいはい、分かりました!
全く眠れないけど、自分の番になるまで、取り敢えず、こうやって横になって、休んでおくといいんでしょ!
故意に薬を飲まずに、こっち側に乗り込んだ事は感心するけど、
まだ、こっちの頭脳班のアーロンの方が差別しなくて良さそう。
とにかく、寝込みを襲われるような心配は、この2人にはしなくて良いって分かっただけでも、今は救いなのかも。
隊長は、火を絶やさないように、その辺からかき集めた、木の枝とかをある程度の間隔を開けて放り込んでいる。
今にもコクリといきそうなくらい眠そうな顔している。
私は眠くないって言っているんだから、素直にさっさと順番変わってくれたら良かったのに、なんて強情なんだろう!
って、思っていたはずなんだけど......
あれっ、私、眠っていたんだ。
いつの間にか、火の当番は、アーロンになっている。
そして、下心丸出し隊長は、リゼットの近くで横になっている。
こっちに背中向けてるから分からないけど、もう眠っているのかな~?
それとも、じーっと、リゼットの寝顔でも見ている?
うわっ、スケベ!
自分の所の隊長が、あんな下心見え見えのスケベ行動していて、アーロンは、どう思っているのかな?
情けなくならないのかな?
そういえば、何だか、今日は色々大変過ぎて、忘れていたけど、私の少し離れた横には、私やマデリンやプリシラがずっと憧れ続けていた美少年が寝息を立てているんだ~!
残念ながら、顔の向きが、リゼットというか、今は隊長の方を向いているのが残念だけど......
こんなに手を伸ばせば届きそうな位置に、ずっと憧れていた人が寝ているなんて!
私、不幸中の幸い過ぎるというか、実はすごく強運の持ち主なのかも知れない!
隊長が、こうしてリゼットにご執心なお手本見せてくれているだし......
私だって、このすご~く不幸で不安な野宿中なんだから、ちょっとくらいウェイドに接近しても、今やマデリンやプリシラから責められない立場だよね!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます