第8話 同期入植者
「№32559、薬の効き目が切れても良さそうなタイミングだが、いつまで、こんな状態のままなんだ!」
少年はまだ深い眠りに落ちている様子で、叩かれてもその瞬間、身体がビクッと動く程度でうな垂れたまま。
「№32598、起きろ!」
少女がいきなり瞳を開けた。
もしかして、自分がその№なのだと自覚出来ていた?
この少女......頭を落としている状態でも、儚げな美少女っぽい雰囲気が漂っていたけど
ビンゴ!
横に並びたくない感じの超絶美少女だった~!
「はい......」
声まで、透明感の有る美しいソプラノ。
『天は2物を与えず』なんて
羨まし過ぎるくらい、この美少女は多分、普通の少女達が憧れる色んなものを生まれながらにして身に備えている。
こんな美しい少女が、本当に私と同じく前世を思い出せないあちら組なのだろうか?
「薬がちょうどタイミング良く切れたようだな。調子はどうだ?」
「大丈夫です」
少年に対しては、鬼のように容赦無く叩いていた戦闘服男までが、その美少女に見惚れているのが分かる。
明らかに、私とは違う表情して、声のかけ方まで優しい。
どんな男でも、こんな神がかった美少女の前では、ただの下僕のようになるなんて。
一緒にいる私には、そんな扱いなんて絶対しないくせに、ズルイ!
「№32559は、このまま目が覚めないと、ただの重荷だ! 次回の入植者が到着するまで、ここに放置しておくか?」
「隊長、この後、生まれた者達は、順調に前世の記憶が蘇ってますから、しばらく、入植者はいない状態になります。№32559をここに放置する事は、検問所の者達の負担が増えますのでご遠慮下さい」
戦闘服の小柄男は、隊長と呼ばれている男より、色んな事に頭が働くらしい。
「そうか、仕方ない。もう少し待つとするか」
隊長が私の横に腰かけた。
どうして、儚げ美少女ではなく私の隣?
「お前は、薬を飲んでなくて、暴れる危険性が有るからな」
そう言いつつ、その魂胆はお見通しよ。
私の横に座った方が、儚げ美少女は真向かいに座っているからよく見える。
私の暴走させない名目上で、儚げ美少女の様子を観察するのが目的なんでしょう!
その儚げ美少女は、もちろん、私からもよく見えるけど、薬の効き目がまだ続いているみたいで、虫も殺さないような大人しい感じに見える。
私も、あんな風に生まれていたら、あちらの世界に行っても、守ってくれる男に囲まれて安泰だったのにね。
それにしても、少年よ。
薬が効いているとはいえ、なぜ、それほどまでに、こんな状況下で爆睡していられる?
私も、錠剤とやらを飲んでいたら、そんな風になっていた?
自分の記憶に無いところで、身体を叩かれて、気付いた時には
「叩いてダメなら、くすぐってやるか?」
隊長と小柄男が、2人がかりで、少年の全身を隈なくくすぐり出した。
男2人から、あれをされるのは絶対にお断りだ!
つくづく錠剤を飲まなくて救われたと思う。
まあ、2人してくすぐったところで、顔や手以外は、迷彩服の上からだから、あまり効果的とは言えないかも知れないけど。
薬の効き目がよほど強過ぎたのか、しぶとく眠りから覚めようとしない少年。
「検問所に着いて、しばらく経過しても寝続けるとは、珍しいパターンだな。薬の効き過ぎる稀有な体質なのかも知れん。特徴欄にメモするように」
戦闘服男達のくすぐり作戦も効果が無く諦めた様子。
「こうなったら、アレだな。よろしく」
小柄戦闘服男に指示すると、たっぷり水が入ったバケツを持って来た。
少年の顔面を狙って、バケツの水を勢いよくかけると、ついに、少年も大きなくしゃみと共に目覚めた。
「は~っくしょん、は~っくしょん」
何度もくしゃみをして身震いしながら、目をこすり起きた少年。
「なるほど......今回は、外見のレベルが高いのが多いな」
私を除いてという感じで、私には目もくれず、儚げ美少女と起きた美少年を凝視している戦闘服男達。
「という事は、2人の配属先は、戦闘隊とハーレムでしょうかね?」
戦闘隊とハーレム......?
戦闘隊って、少年は、この戦闘服男達と一緒の任務?
そんな強そうなイメージ無いけど、まあ、もう1人の戦闘服男のように小柄な人もいるし、単に強そうな見た目だけの集まりではないのかも。
ハーレムはその言葉通り、見目麗しい美女達が群がっていそうな感じで、儚げ美少女には似合うかも知れないけど、夜な夜な男達の相手をするなんて可哀想。
2人は......って事は、私は、別の所に連れて行かれるんだろうな。
「もう1人、№32541はどこに配属させます?」
「こいつは、錠剤を飲まずにいた問題児だからな、取り敢えず、到着するまでの間、適性を見ながら決めるとするか」
私の事を問題児扱いしてくる、この戦闘服の隊長には、入植者の配属先を決めるほどの権限が有る?
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