第4話 過去世の認識法とは......

「もしも、このまま思い出せないで15歳になったら、私、どうなるの?」


 このままの生活がずっと続いていくのだと、何の疑問も抱かずに今まで暮らして来たのに......

 この幸せな生活は、あと残すところ3日しないうちに、終わってしまうかも知れないんだ......


 圧倒的多数の同い年の子達が、何も悩む事なくひょうひょうと現状の生活を営み続けるのに......

 私だけが、3日後からは望めなくなるなんて、そんな悲劇みたいな事って有っていいの?


「私の周りで、前世の記憶が思い出せない人はいなかったから、詳しくは知らないのよ。でも、っていう、ここからかなり離れた場所に、そういう人達だけを集めた居住区が有るらしいの。の人は、誰も行った事が無いから、どんな所か分からないけど、そこに移住させられるわ」


 マデリンから聞いた内容と同じだ!


 2人とも、自分の周りになどいた事が無かったから、噂でしか知らない。

 それほど、この世の中に、という人々の比率は少ないという事なんだ。

 そんな数少ない不名誉な人物の1人に、なぜ私が選ばれた?


 ママが、の人と、自身を含めた圧倒的多数の人々の事を表現したのは、今の私にとって、この上も無く切なく感じられた......


「私が、もし3日後までに、思い出せなかったら、もうこの家には2度と戻れなくなるの?」


 あと3日で、ママやパパや友達ともお別れ。

 1年に数回くらいは、里帰りとか許可されるのかな?

 無礼講でOKみたいな、あちらとこちらの交流会とかは......?


「2度と会えなくなる人が殆どみたいよ」


 殆ど......?


 って事は、もしかして、脱走するような人もいるとか?


「聞いた噂では、ごくごく稀にだけど、15歳過ぎてから、前世の記憶が戻ったパターンが有って、猶予期間が20歳までだったかしら? それまでに、前世の記憶が戻った場合、適合審査というのが有って、OKが出たら、ここに戻れるらしいわ」


 20歳までの猶予期間!

 あと5年くらいある!


 5年の猶予が有るのなら、私も、そのうち思い出せるかも知れない!


 な~んだ、一生、そこに閉じ込められるってわけではなかったんだ!


 私には3日後までに思い出せるっていう希望は、ほぼほぼ消えてしまっているけど、5年後という猶予期間までなら、まだまだ希望は捨てなくても大丈夫!


「そうやって、ここに戻れた人って、どれくらいいるのかな?」


「本当にごく僅かなはずよ。たまにニュースで見た事有るけど、最近は、そんなニュースも見かけなくなったわ。一体どんな状態で生活しているのかしら? の情報を全く公開して無いから、私達には未知の世界なのよ」


 戻って来た人は、それまでの生活を語ったりしないのかな?


 ごく僅かでも生還者......

 ううん、人聞き悪い!

 帰還者がいるんだったら、そこでの様子も噂になって、知っている人達がいたりしてもいいはずなのに......


「戻って来た人の特集番組とかニュースが、テレビで放送された事って無かったの?」


「適合審査の時点で、そこでの記憶を消去されてしまうみたいなの。野蛮な個性のまま、に戻ったら、犯罪とかが増えて大変でしょう?」


 野蛮って......?


 私が、これから行くはずの居住区、そんな所なの?


「野蛮な人達ばかりなの?」


「一概に何とも言えないけど。前世の記憶を思い出せない人達は、地球や火星出身の魂の人達が多いそうなのよ。ティアナも理科の授業で習ったでしょう?」


 マデリンも言っていたように、一般的に知れ渡っている情報は、その程度なのかも知れない。


 地球や火星......


このシェマーラ星からは、遥か遠く離れた太陽系惑星だ。

 仮に、私の魂の故郷はそんな辺鄙へんぴな星だったとすれば、私が当てずっぽうに、前世が『冒険者』と言ったのは、満更外れてなかったのかも知れない。


「ママは、どうやって、思い出せたの? 思い出しやすい食べ物とか、身体の動かし方とか、パワーの強い場所とか、何か前世を知るきっかけって、有った?」


 猶予期間があと5年間有るにしても、とにかく、あと3日以内に思い出せるなら、それに越したことはない!


 かつては、思い出すのが遅かったママも、きっと周りが既に思い出している中で、焦って色々試してみたのかも知れない。

 もしかして試してみたら、思い出す可能性の有りそうな事が有るかも。


「ずっと昔の事だから、あまりハッキリ覚えてないけど、私の場合、確か夢で教えられたのよ」


 今、『夢』って言った......?


「夢でって? それは、ただの夢で、前世とは無関係かも知れないじゃない!」


 ママったら、よくそんな夢で見たものを勝手に前世と信じられたものだ。

 この期に及んで、役に立たない情報を伝えて来るなんて.....


「えっ、何言ってるの、ティアナ? あなた、メッセージドリームを見た事無いの?」


 私以上に驚いている様子のママ。


 メッセージドリーム.....?

 自己解釈じゃないの、それ?


「普通の夢と何が違うの?」


「全然違うわよ! メッセージドリームの場合、まず夢の中に天使が現れて語り出すのよ!」


 えっ、天使......!?

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