第16話 混乱

「はぁ!?上山が生きてて葬式に行ったことがまずいって!?」


教室の中に響く学の声。


どうやら真人に昨日起きたことを説明され、内容に脳が追いついておらず、困惑しているようだ。



「昨日、上山の家に行ったんだが…親は上山が生きてるの一点張りだったんだよ!!俺が家を去るときには帰ってくる直前とかなんとかで!!」


「ちょっと落ち着けってば、お前はライバルだったから驚かせようと言っただけじゃないのか?」


いつもは冷静さのほうが多い真人は、今は異常に興奮した様子で、学も落ち着かせるのに必死である。




そんな話をしていた時、


ピンポンパンポン


と、学校の放送が流れだす。


これは突然とはいえ、日常ではよくあることのため、二人は耳だけを傾けたまま話を続けている。



しかし、


「武内 学さん、葉月 真人さん、お客様がお見えですので至急職員室までお越しください。」


まさか自分達の名前が出されるとまでは思っておらず、二人は互いに問い掛け合うように向かい合う。



「俺たち二人とも?最近、何もしてないよな?」


「さっきのお前の話のせいか、嫌な予感するんだけど。」


学の言う理由も理解できる。


なぜなら、このクラスで葬式に行き、事故について調べているのは彼らだけである。



この呼び出しは果たしてただの偶然なのか…。


「なぁ、上山に関係ある話かな?」


廊下を歩きながら、学は真人に問いかける。


さっきまで落ち着かせていた学はどこへやら、不安そうな様子が見るからにわかる。



「まぁ、ほかに俺達が呼ばれる時は犯罪の手前ぐらいの悪事をしたときかな。」


過去にしたことがあるのか平然と答える真人、そんなことを言っている間にたどり着いた職員室。



「失礼しまーす。」


躊躇っていても仕方がないため、元気よく入室すると、待ってましたと言うばかりに担任の先生が駆け寄ってきた。



「お前ら何かしたのか?校門で警察の方がお待ちだ、すぐに行ってこい。」


警察…ある意味、上山について聞くために好都合で行く手間が省けたが、なぜ向こうから来たのかはわからない。


とにかく言われるがまま、二人は校門へと向かうしかないようだ。



心地よいとは言い難い風が二人の髪を揺らす、燦々と照りつける太陽の日差しは二人の不安な心とは真逆だった。


目の前に見える校門には確かにパトカーが一台、止まっているのがわかる。


そしてその近くでタバコを吸っていた五十後半くらいの警察官。


恐る恐る様子を気にしながら近づく二人、それに気づいたのか警察側も歩み寄ってくる。



「いきなり呼んですみませんね、私は蔵末 勝(くらまつ まさる)と申します、えーっと…」


呼んだからには名前を知っていて、おそらく今はどちらが学でどちらが真人かわかっていないのだろう。

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