第13話 真希
それは真人が帰宅した時と同時刻の上山家。
「あら?もう少し早く帰ってくればよかったのに。」
そう言って上山母は誰かを迎え入れた。
「…?」
長い黒髪を靡かせ、服は赤と白のワンピースを着た、年は真人と同い年くらいの少女。
それは、上山真希そのものだった。
「そうだ、真希?今日真人君が来てたわよ。」
上山母も死んだはずの娘の名を呼び、彼女に話しかける。
その時、初めて上山らしき人物が口を開いた。
「真人君…って、あの?」
透き通った少女の声だが、どこか暗い印象をうける。
だが姿だけでなく声までもが生前の上山真希と瓜二つだった。
「さすがに忘れてないわよね?けれどもあの子も葬式に行ったようで、皆と同じだったから残念だわ。」
「真人君が…?」
予想外だったのか、少し困惑した様子の真希。
「…まぁ、あなたがどうするかは知らないけど彼、気をつけたほうがいいかもね。」
「なぜ?」
娘の疑問をよそに上山母は何かを感じ取ったかのように、少し呆れ顔をしており、
「彼、今まで通りでいられるかしら?もう間違っちゃってるかも。」
「!!」
その結論は娘にとっては反応するしかない一言。
「ところで…あなたまた間違い探しをしてきたの?。」
彼女はそう言って上山のワンピースに目をむける。
「それが私の取り柄だし、趣味だもの。」
先程の話題を変えられたことが不愉快なのか、すこしむすっとしながら答える真希。
間違い探し、それは大会を模したものならば、紙を用いてそこに書かれている絵の間違いを探すもの。
しかし、彼女の手には何も握られてはおらず、上山は白に赤を塗りたぐったような色をしたワンピースを眺めている。
「あまり目立つ行動はやめなさい、そんなに汚しちゃって…もともと真っ白な色が好きだからって買ってあげたのよ?高かったんだから。」
上山母いわく、今現在上山真希が着ている赤と白のワンピースは、元々の純白の色だったようで今はなぜか、その純粋さが失われていた。
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