第12話 休息
「はぁ、はぁ…ただいま。」
急いで上山家から帰ってきた真人、よほど急いだのかまだ息を切らしている。
「遅かったね。…って、大丈夫?顔色悪いよ?」
息を切らした真人を見て、家の中から妹の舞が心配そうに駆け寄る。
「あ、あぁ…疲れてるみたいだ。今日は早く寝たいんだけど飯できてるか?」
真人はなぜか早く朝になってほしい…そう感じてしかたがない。
「すこし時間がかかるかな。そうだ、なら先にお風呂入ってきて?その間にご飯作っとくから。」
何かを察したのか、体を気遣ってくれたのか、舞は迅速な対応をしてくれた。
「悪いな。」
そう言った真人は浴室へ向かう。
「…何かあったのかな?悪いな…なんてセリフが珍しすぎて明日は雨が降るかも。」
真人に聞こえない声で妹はそう呟くのだった。
白く立ちのぼる湯気。
頭にタオルを乗せた真人は、熱い湯船に浸かりながら今日の出来事を振り返っていた。
「上山が生きていて今も平然と暮らしてるかもしれない、もし仮にそうだとしたら俺たちは誰の葬式をしたんだ…。」
謎が多すぎてわからない。
実際に上山真希を自分の目で見たわけでもなく、もしかすると上山母の虚言や本当に気が触れている可能性だってある。
「間違い探しを頑張れって、前みたいに平然とやれるかよ…こんな形で優勝できたとしても!」
実力差が唯一拮抗していたのは上山真希だけであったため、普通にいけば真人が次回優勝は間違いない。
だが、あくまで上山から勝ってこその勝者であり、心身共に乱されている今はそれどころではない。
「…明日、学に相談でもしてみるか。」
このまま考えていると、いつまで経っても湯船から抜け出せそうにないため、話を割り切るしかなかった。
真人はその後、舞が用意してくれていた夕食を食べ、いつもよりもかなり早く寝床に就いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます