第11話 悪寒

「アンタ…親だろ!?ならなぜ自分の娘の!!」


「あんな意味のない葬式に行くほうがおかしいのでは?むしろお葬式に行ったあなた達こそ私の娘に失礼ですよね。」


言葉を遮り、すこしムッとした表情で話す上山母。



(なっ…何を言ってるんだ?葬式に行ったほうがおかしくて、娘に失礼!?…これだと、まるで上山がまだ…)


「…生きてますよ?真希は。」


真人の心の中を見透かしたかのように上山母は笑顔で答えた。


けれど、それが本当ならば今までの彼女の発言は筋が通っている。


そして、少しは喜んでいる自分…しかし事故と葬式のことでまだ矛盾があり、言葉だけでは信憑性が無い。



「それは脳内や心の中など空想の話…とかではなく?」


「えぇ、勿論?生きているのに警察からの電話、花束、周囲の人からの哀れみ、葬式までされて…これでは真希が可哀想ですよ。」



警察が間違えるはずがない。


それに昨日は中まで見れなかったが棺桶が葬式会場にあり覆りようもない。


だが、上山母の気迫も相まって彼女が嘘を言っているようにも見えない。


だからこそ、真人には娘を失ったショックのあまり気が触れているのではないかと感じた。



「…真希は、しばらく我慢していたけれど、昨日あった葬式…あれで吹っ切れたようですね。」


しかし、その言葉を聞いた瞬間、真人は急に寒気を感じはじめた。



「吹っ切れた?なぜ進行形に?ほんとに生きてるのか…?」


「もうすぐ彼女も帰ってくると思いますが…待ちますか?真人君を見れば真希も喜ぶかと。」


なぜか寒気が止まらない。


今、上山母が言う彼女に会うのはとてつもなく嫌な予感がする。



「い、いえ…今日はもう遅いので色々とすみませんでした、真希さんによろしくお伝えください。」


「そう…残念ね。」


早々とここから離れたい。


その思いから、なんとか家を出ることができた真人。



帰り際…


「あぁ…真人君?間違い探し…頑張ってね。」


なぜか上山母は真人にそう呟いた。


真人は一礼だけして、その場を後にした。


冬でもないのになぜか身震いが止まらず、鳥肌まで立っていた。

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