第4話 少女のサプライズ

「フフッ…さすが真人君ね、両者譲らぬ決勝戦はまだまだ続きますか。」


そう微笑みながら独り言を呟いているのは真人の良き間違い探しのライバル、上山 真希である。


今はバスでどこかに向かう途中なのか、窓から過ぎ行く景色を眺めている。



「緊張するなぁ、大会以外で会うのは初めてになるものね…突然のサプライズ訪問、びっくりするかな?何を話せばいいのかしら。」


どうやら真人の家に向かっているらしい。


大会で初めて真人と会ってから、良きライバルとして知り合ったものの、大会以外で会うのは初めてのようだ。


住所はお互い大会での交流と、参加者の登録書を何度も見ているため知っており、距離もバスで一時間と数分歩けばたどり着ける範囲。


しかし、会う約束をしていないサプライズのためか、すこし不安そうである。



「まぁ…大丈夫よね?時間無制限で決着つけにきました!!…て言えば。」


そう、昨日の大会で両者が不満そうに思っていた大会ルール。


(ずっと大会ルールが原因で勝敗が決まらないなら大会の外で行えば…合わせて交流できれば)


そう考えたのか、必ず勝敗が決定する大事な戦いを行うために、上山は一人バスに乗っているのである。



普段は大人しく、このように思い立ったら行動をするような、ましてや顔見知りとはいえ異性の家に殴り込むような大胆なことはできるはずがない。


突き動かすのは真人への興味と間違い探しへの愛からか、本人曰く、気がつけば体が動いていたそう。


つまりこの日、上山の思いつきと行動によって大会非公式ではあるものの、間違い探し界に新たな歴史が生まれるのである。




「ただいま…って誰もいないよな。」


そんなことも露知らず、自宅に帰るなり独り言をつぶやく真人、状況でいえば図らずしも上山真希の訪問に備え、帰宅している形となっている。



真人は父と母と妹の四人暮らしの平凡な一家。


ただ、両親は多忙で出張による留守が多く、普段は妹と二人で過ごすことが多いのだが、妹も帰宅部の真人と違い帰りが遅い。



そんな、一人の孤独を紛らわすつもりか、帰るなりすぐテレビをつけることが自身の日課となりつつある。


ただ、芸能人で誰が好きだとか推しだとかはないため、シンプルに明日の天気や今日あったニュースを流したままといった状況だ。

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