第3話 懸念

「痛…何も本気でやらなくてもいいじゃんか。」


帰り道、頬を押さえながら真人に不満を訴えている学。


しかし、なかなかのダメージとはいえど、その程度では二人の友情は支障がでないほど深いようである。



「自業自得、今のお前にお似合いの言葉だな。」


少しは反省の色は見せつつも、口では正論を述べる真人。


しかし、本気で攻撃するほど焦りを見せたのが謎であるが…。



「と言うよりも、お前だって昔のクラスメートだったとはいえ、話に食いつきすぎじゃないか?」


今度は此方が攻める番と言うかの如く、真人は隙を見て的確に質問する。


真人は学が自分と同じような焦りを見せると予想していた。


しかし学はむしろ、いつもより真剣な顔つきになっていた。



「いや、アイツは悪い奴じゃないんだが一度見つけた特技をとことん磨くタイプでさ…そこが気になってな。」


予想外の真面目な回答だったが、真人は驚きよりも疑問が上回っていた。



「別に向上心は、いいことじゃないのか?」


「いやアイツは、その向上心が普通じゃなかったんだ。…特に間違い探しはな。」


そう話す学。


しかし、大会で上山を見る限りでは、そのような異常性は見えない。



「それって…俺にも当てはまってたりとか?」


「軽く…な。」


真人は、もともと自分と真希は似ていると感じていた。


そんな彼女特有の異常、それは自分にも当てはまるかもしれないと、恐る恐る問いかけてみたのだが…案の定、学は苦笑いだった。


どうやら予想的中である。



「…まぁ、あれは俺が悪いがお前は間違い探しといったゲーム以外でも間違いを探しただろ?」


「今日の…あれか?」


それは少し前に学とした冗談混じりの喧嘩についてのことだった。


探したと言うより見つけたと言ったほうが正しいかもしれないが…。



「まぁ…お前の場合はただ、純粋に特技と掛け合わせて言ったことだったけど上山の場合は根本的に違うんだ。」


さらに深刻な表情になる学。


先ほどふざけていた学と比べると、まさに全てが間違いと言っても過言ではない。



「あいつはもっと広い視野で間違い探しをしてたんだ、例えば、物事全てが間違いだとか…な?」


懐かしむ思いで、振り返る過去。


だが、過去を知らない真人にとっては言っている意味が、あまり理解できていない。



「まぁ…簡単に言うなら大袈裟過ぎる考えを持ってるってことか?」


自分を振り返り導いた結論。


「まぁ…そういうことかな?でも、あくまで昔の話、今の話はお前も頭の片隅に置いとけよ?…それじゃ!!」


「な、まだ話の途中だってば!!」


同じ特技だからこそ気をつけろと言いたいのか、そう話すと学は、いつも別れる十字路に差し掛かり、家に帰ってしまった。



(広い視野での間違い探し…か)


学の話に真人は当てはまりつつある自分と、上山の昔についての話で困惑していた。

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