第2話 少年の日常

「今日で終わらせる!!」 


「私も、そのつもり。」


ある場所で毎月行われている大会。


それは間違いを制限時間内に見つけあう、間違い探しの大会である。



開催日も例年通りで年に数回程度定期的に開かれており、聞く限りは地味な大会だが意外と参加者が全国から数百人と集まるほど多く、信じられないほどの盛り上がりを見せている。


只今、その大会の決勝戦。



それは一つの恒例となっている名勝負、葉月 真人(はづき まこと)と上山 真希(かみやま まき)の戦いである。


静まり返る会場。


現在、齢十六といった若い二人は、出場し始めた時から決勝戦にて対峙しており、出来レースとも囁かれるほど名物となっている。


互いに出された問題に対して瞬間的に変化している箇所を指摘し、その正確さやタイム、枚数を競うのだが、多少の違いはあれど総合で見るなら五分五分といったところ。



そんな二人を皆が見守る中、しばらくして葉月真人が声をあげた。



「また引き分けかぁ…時間無制限なら決着つくかも知れないんだけどな。」


「いい加減、この大会もルールを一度決め直すべきなんじゃないかしら…。」


どうやら試合が終わったようで、結果は時間による引き分け。


それは、幾度となく繰り返されてきた展開だった。


端から見れば出来レース、広い目で見ればローカルな大会、されど同じ場所で同じ趣味を持った者たちからすれば、それは屈指の名勝負であったのか、皆いつかつく決着を楽しみにしているように思えた。




「ってのが昨日の大会の結果だ。」


「まぁ…だいたいわかってたけどな。」


翌日、学校にて親友の武内 学(たけうち まなぶ)の机の前で自信満々に話す真人。


それに対して毎度毎度、同じことを聞かされているため反応が薄い学。



「ところで…上山はいつも通りだったか?」


学はそこだけ興味があるのか大会内容を無視して問いかける。


「あぁ、いつも通りの強さだったぜ。」


それもそのはず、学と上山は中学まで同じ学校で、クラスもよく同じだったため、大会よりもそちらが気になるようだ。


真人としては大会については無関心だったため複雑な心境だった。




「まぁ、戦いも他も、お熱い二人は留まるところを知らずってか?」


そんな大会のことにあまり触れなかったので不機嫌そうな真人を見て、機嫌直しを計る学。



「も、って何だよ!?…別にそんなんじゃないってば!!」


色々な意味にとれる唐突な発言に焦りを見せる真人、だが満更でもなさそうである。


確かに、上山真希は少し物静かでミステリアスなところはあるものの、目がクリっとした二重で少し細めのスラッとした容姿端麗、肩甲骨より下に伸びた長くサラサラな黒髪が特徴で、どこか幼さも見えるいわゆる守ってあげたくなる小動物女子。




「冗談で言ったのに、なんか必死だな?もしかして、お前…。」


そう言いかけた瞬間、


「俺が間違い探しを得意なこと知ってるよな…なら、今の発言が間違いだぁぁ!!」


「うわ!?お前、やめろぉ!!」


学に飛びかかる真人。


どこにでもある風景、あたりまえの日常、そんな日々が二人にとって幸せだった。

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