第11話
第11話〜獣使いの獣(帰還)
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聞きなれた声と心が安らぐ香り...リリィーが黒い獣の方へと目をやるとそこには、黒い竜が存在していた。
「よ、ヨグ様?」
あの黒い竜からは誰よりも大切なあの人の匂いが微かに感じられる。
「リリィー無事か! いやー、間に合って良かったよ。もし遅れていたらなんて考えたくもないよ」
「やっぱり...ヨグ様! どどど、どうしたのですかそのお姿は!?」
「あれ? リリィーはこの姿見るの初めてだったか? それなら驚いても仕方ないね」
「もしかして、たまにヨグ様が会話してたニーズヘッグさんですか?」
「さすがリリィー様です。私の本来の姿はこれが正しく、槍の姿は目立たないためなのですよ」
声が外側から聞こえてきたと思うと、ニーズヘッグが会話をしていた。
その声を聞いたリリィーは一瞬驚くが、すぐに理解してくれる。
リリィーはできる子で良かったと尚更実感した。
「それじゃあ、あのゴミ虫を片付けてくるからリリィーはできるだけ動かずに回復に専念してくれ」
「は、はいヨグ様!」
リリィーは岩陰へと隠れ、こちらの様子を伺いつつ体を休めている。
そして、リリィーの安全が確認できたので俺は目の前の黒い獣に集中する。
しかし、お互い動かずに時間だけが流れていく。
不思議に思い、俺は黒い獣をよく観察してみると小刻みに震えていることがわかった。
ドラゴンの姿に怯えているのだろうか。
俺はニーズヘッグに頼んで攻撃形態へと移行してもらう。
すると、ドラゴンの中身が人間だとわかった黒い獣は喜々として殴りかかってくる。
「ウガアアアアアアア!!!」
黒い獣の拳が横腹に直撃したが痛みはなかった。
「攻撃形態だからってダメージが入ると思ったら大間違いだ。それじゃあそっちも攻撃終わったから次は俺からかな」
「マスターこちらをお使いください」
ニーズヘッグが目の前に不思議な魔法陣を描くと、二本の両刃剣のようなものが出てくる。
一本は大剣のような形をし、もう片方は細長くて角が四角い形をしている。
「ニーズヘッグ、この武器は初めて見るけど...どう使うんだ?」
「この武器は、マスターの腕力で持てる最高峰のものを用意致しました! なので、特に使い方は決まってませんし、適当に振り回して殴ちゃってください」
「適当に振り回して殴るって...まあ、作りたてなら仕方ないか!」
とりあえず、武器を手に取ると何故か手に馴染む感じがする。
まるで今まで使っていたように感じる程に。
「いいね、この武器なんかよく分からないけど扱いやすい」
武器をクルクルと回す度にフォンフォンと空気を切る音がする。
そうして、遊んでいると目の前にいた黒い獣は姿を消していた。
しかし、この場所にはリリィーの来た道しか出口がないので逃げてはいないだろう。
すると、ニーズヘッグのレーダーが真上に生命反応を検知する。
「マスター! この場所なら思いっきり投げても大丈夫ですからやちゃってください!」
「よしニーズヘッグの許可も出たし本気で投げてみるか!」
俺は両刃剣を槍を投げるように構える。
すると、どこから声が聞こえてくる。
EXスキルを解放
???:赤い瞳/名も無き竜の鼓動
「...ドク...ドクッ」
集中すればするほど鼓動の音が強く、振動がより正確に感じられる。
すると機体から赤いオーラのようなものが出始め、構えていた両刃剣に纏うように集まっていく。
「竜の鼓動...」
俺の瞳は赤色へと変わり、黒い獣へと視線を向けるとびくりと背筋を震わせる。
そして、なにかに感ずいたのか黒い獣は真上から襲いかかってこようとするがもう遅い。
「灰を示そう...」
そう言い放ち、俺は力いっぱい構えていた両刃剣を投擲した。
武器が放たれると同時に物凄い衝撃波が発生し地面がめり込む。
両刃剣は黒い獣に向かって直撃し真上に打ち上がっていった。
そして、天井へと到達したが、止まることなく上へと登っていく。
ついには天井を貫通し眩しい朝の太陽が目に入ってくる。
その頃には黒い獣の姿はなく、雪のような灰だけが落ちてくる。
「マスター敵の生命反応の消滅を確認」
「了解、それにしてももう朝になってたのか!」
「忠告!! マスター、すぐにでも脱出の準備をしてください! どうやら私の計算ミスでダンジョンが崩れています」
「え、え? やばいじゃん! リリィー! リリィー! ここから飛んで脱出するからこっちに来てくれ!」
「は、はいヨグ様...あっ......」
リリィーは何を思ったのか突然方向変え、人骨の山の中から何かを手に取る。
そして急いで走って来るがもうダンジョンは崩壊寸前だった。
「ヨグ様ーーー!!」
地面が崩れリリィーがまた落ちていきそうになるが今回は違った。
「大丈夫だよリリィー、君の手を今回ははなさないから!」
リリィーが落ちるギリギリのところで腕を掴み持ち上げる。
そして二人の安全が確認できたところでニーズヘッグは一気にエンジンをフル稼働させ大空へと飛び立つ。
「こちらニーズヘッグ飛行を開始します」
ニーズヘッグの合図と共に大空へと飛び立つ。
そして目の前には太陽とそれに照らされた緑の大地の絶景が広がっていた。
ダンジョンクリア
報酬
獣使いの記憶
称号
獣使いの英雄墓の解放者
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~古都の内側-探求者ギルド〜
あの後、ダンジョンから脱出した俺とリリィーは探求者ギルドへと急いだ。
ギルドに入るとまず、あたりの視線が気になったがリリィーが負傷していたため急いで受付に向かった。
すると、受付嬢は何かを察したのか大慌てで薬品のようなものを数本持ってくる。
「傷がどれほどか分からないので上級ポーションを飲ませます! それとギルドリーダーに報告致しますのでここで安静にしていてください」
俺は受付嬢に一礼し急いでポーションをリリィーに飲ませようとする。
しかし、リリィーも体力の限界らしく上手く飲ませられない。
仕方ないので俺はポーションを一度口に入れ、リリィーに飲ませた。
周りにいた他の探求者たちは皆顔を赤らめあまりこちらを見ないようにしてくれている。
「ごく...ゴキュ......ん? 、んっ!!」
気絶寸前だったリリィーだったが、ポーションが効いたのか最悪のタイミングで目を覚ましてしまう。
すぐにリリィーから顔を遠ざけたが、リリィーの顔は真っ赤になっていた。
また、その様子を見た俺も少し照れくさくなる。
「...あ、あのリリィーもう傷は大丈夫か?」
「ひゃい!? あ、あっ、大丈、大丈夫ですにょ!」
かなり気まずい雰囲気が漂ったが、幸いにも受付嬢が戻ってきてくれた。
「大丈夫かい! ヨグ君リリィー君!!」
受付嬢の後ろにはギルドリーダーの姿があった。
「何があったかすぐにでも聞きたいとこだけど、ここじゃあれだから部屋を用意するよ。二人ともついて来てくれるかな?」
部屋を用意すると言ったギルドリーダーについて行くと、ドア前にギルド長室と書いてあり、なんだか
そして同時に嫌な予感も感じていた。
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