第9話
第9話〜獣使いの獣①
〜獣ダンジョン‐最下層〜
その頃、ニーズヘッグと俺はリリィーのいるダンジョンの最奥を目指してダンジョン内を走り回っていた。
「グルルルルルルル...」
「すまないが道を開けてもらおうか!」
前方には大人一人くらいある黒い狼のようなモンスターが侵入者を追い返そうと威嚇し牙を見せる。
しかしそんなことで俺とニーズヘッグは止まらない。
「
「ギャウウウウウ!!!」
黒い狼は悲鳴のような声を上げながら、放たれた三本の斬撃により灰へと戻っていった。
入手アイテム
「黒獣の毛」「黒獣の皮」
「黒獣の毛」
鮮やかな黒色をした毛。かつて大国もが恐れた英雄がこの毛を使った衣装を来ていたそうだ。
「黒獣の皮」
表面がザラザラとした一枚革、1級品のブーツに用いられその需要は時に金と同等だったと言う。
そして、灰へと帰したモンスターのアイテムを回収しつつ奥へ奥へと向かった。
ある時は物陰に隠れ、ある時は逃げたりとなかなか落ち着く暇がなかった。
時間が刻一刻と過ぎる中、次に相手をしたのは花の形をしたモンスターだった。
このモンスターは辺りに黄色い花粉のようなものを飛ばし麻痺の状態異常を付与させてきた。
しかし俺の前世での人体実験により麻痺の状態異常など心配する必要もなかった。
入手アイテム
「アデバナの花弁」×4
花のようなモンスターを倒すと奥にはまたもや広いエリアへと辿り着く。
かなり奥まで来たので空気は薄く、辺りには光り輝く草が生えており視界はギリギリ確保出来ている。
しかし足元がはっきりと見えている訳では無いのでゆっくりと進んで行った。
「マスター、少し止まってください!」
「お、どうしたニーズヘッグ?またもや落とし穴でも見つけたか?」
「いえ、前方に障害物となるものはありません。しかし、ここから先はどうやら真っ暗になっているみたいです。なので、一度私が元の姿へと戻りますので、マスターは再びコックピットへ乗ってください。そうすれば暗い場所など心配ありません」
「確かに言われてみれば暗くなってきているな。これ以上はニーズヘッグを装備していけば最悪の事態にもならずに済みそうだしな...おっけー、じゃあそうしようか」
「了解。こちらニーズヘッグ、マスターの命令通り実行致します」
すると手に持っていた槍が、魔法陣のようなものを描きながら宙へと舞い、そしてどんどんと元のニーズヘッグへと戻っていく。
それはものの数秒の出来事だったが未だに謎が多く神秘的だと感じる。
「マスター、準備が整いましたのでコックピットへとお乗りください」
ニーズヘッグはそう言うと胴体部分が開き始め、中には操縦席のことコックピットがそこにはあった。
俺は
そして、目を開けた途端、全ての感覚がニーズヘッグそのものへとなっていた。
「パイロットとのシンクロ率100%完了、マスターの体調を確認中...良好。暗視モードへ移行、マスターの視界を確保。マスター移動を開始してください」
「久々に乗ったけど、この視点の高さはなれないものだな。まずは一歩、おっと! 危ない危ない、岩につまずくとこだった! ...それにしてもさっきはあれだけ暗かったのにまるで昼間みたいじゃないか? ...まあニーズヘッグがすごいのはいつもだな」
「はい! 私は高性能ですので!! ...マスター前方に扉を発見しました」
「扉? ...扉...あっ! あれか? にしてもでかくないか? しかも扉閉じちゃってるじゃん!?」
「マスターの障害は敵...即ち死!! 破壊の許可を、マスター!!」
「破壊って言ってもこんなデカくて分厚い石の扉をどうする気だよ! 下手に衝撃を与えて崩れてきても困るぞ」
「安心してくださいマスター。私のフル火力はこの星の端から端まで吹き飛ばせますので簡単です」
「いや...それはそれで心配な気もするけど。まっ、いいかニーズヘッグやっちゃって!」
「マスターの許可を承諾しました。対象を捕捉...火力の調整中...マスターと周囲の安全性を確保しました。砲撃威力5%で破壊可能です。マスター最後に射撃をお願いします」
ニーズヘッグの頭の部分には大量の魔力が流れ込んでいき、球体のようなものを形作る。
その球体からは雷のような火柱が飛び交っている。
そして、石の扉に向かって引き金を引いた。
「了解、ニーズヘッグぶっぱなせ!!」
右腕に魔力が装填されていき、赤い輝きを放ちだす。
そしてその輝きは丸い球体のようなものを形成していき放たれる。
ドゴオオオオオオオオオオオオーーーーーーンンン!!!!!
砂嵐が舞い上がり、物凄い轟音とともに周りは吹き飛ばされていく。
目の前にあった石の扉は見事なまでに粉々に粉砕していた。
「あわわわわわ...」
一瞬、何が起きたのかわからなかった。
引き金を引いた途端、耳が潰れてしまいそうなほどの轟音と、ニーズヘッグの中にいても伝わる振動に耐えるので精一杯だった。
もし、これがフル火力だと思うと身の毛もよだつだろう。
「マスター、これよりダンジョンの最奥となります。一応ですが気を引き締めていきましょう」
そうニーズヘッグ言われて俺は本来の目的を気付かされる。
「ああ...もうすぐ迎えに行くからなリリィー」
俺は一歩また一歩と奥深くへ続く階段を降りていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〜獣のダンジョンの最奥‐中層〜
その頃、リリィーはダンジョンの最奥の中層まで来ていた。
しかし、辺りの物静けさはまさに嵐の前触れのようである。
また上の方にいたようなモンスター達は一切見なくなった。
「まだまだ奥は続いてますね...」
彼女がいくらサラマンダー族と言えど、疲労はすでに限界に近い。
彼女が息を整えようと立ち止まると、落ちてきた場所の方から爆発音と多少の揺れが伝わってくる。
「また地割れ...いや、微かに魔力が伝わってきました。多分ですがヨグ様ですね。上でなにか問題でもあったのでしょうか...待っていてくださいヨグ様、私も直ぐに向かいます」
彼女は右腕に持っていた大盾を再度持ち直し、前へと進んで行った。
その後、約数十分が経過したくらいの事だった。
彼女は歩き続けているとふと足元にあった何かを蹴り飛ばす。
カランカラン...。
「ん? ...これは......骨!?」
それは骨と言っても人骨ではなくモンスターの骨だった。
「ダンジョン内でモンスターが骨として残るはずがありません...ってことは外から入ってきたモンスターですね! 奥には外に通じる道があります!」
彼女は期待を胸に急いで奥へと走っていく。
しかし、この時の彼女は周りが見えていなかったのだろう。
辺りには沢山の骨が積み重なっていることに.....。
ーーーーーーーーーーーーーーー
〜獣のダンジョン最奥‐最下層〜
「はあ...はあ......」
彼女は走って、走って、また走って...そして、太陽の明かりが眩い場所へと出られる。
しかし、着いた場所はまさに地獄とさほど変わらない場所だった。
「はあ、はあ、やっとついっ...た......」
目の前にあったのは無数に積まれた人骨の山だった。
それも一つではなく数十もの山が積まれていた。
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