第2話
第2話 始まりの大地
〜???〜
目が覚めると、俺は地面に寝ていた。
地面からは草木の良い香りがして心地よい風が体を撫で回すように吹いている。
目を開けると「久しぶりです」と言わんばかりに太陽の光が目に飛び込んでくる。
次第に目が太陽の光に慣れて、辺りが見え始めるとそこには目を擦って確かめたくなる程の壮大な大地が広がっていた。
辺りには木々が生い茂り、広大な草原が無限のように広がっている。
「す、すげぇ! これが異世界なのか!? 広すぎて奥が見えねえ!」
三六〇度どの方向を向いても緑が広がっている。
俺は心を躍らせながらも地面にしっかりと足をつけて記念すべき第一歩を踏み出した。
すると目の前には文字が浮かび上がった。
「ん、なんだこれ?」
そして内容はこうだった。
「神様より...こんにちは地球の子よ。私はこの世界の管理を任されている者です。貴方は地球で死んでしまいましたが今回は特別にあなたの要望を叶えた上で転生させて頂きました。
ですが特にやってもらうこともないので自由に生きていただいて結構です。では楽しい異世界ライフをご堪能ください」
読み終えた俺は安堵する。
なんと言っても異世界転生っていうのは理由があってするものだと勝手に決めつけていたため転生して魔王とか強大な敵を倒してこいとか言われていたら、正直怖いし面倒くさい所だった。
でもそんなことは一切なく、しかし自由に生きていいとかこの世界の神様はとてもいい神様だ。
それから俺の願いを叶えてくれたってことは、今俺はドラゴンになっているってことだろう。
しかし目線はそのままだし、手や足も人間まま。
ましてや尻尾や大きな羽などはどこにも付いていない。
一体全体どこがドラゴンだと言いたいのだろうか。
見た目は人間だが、神様が嘘をつくとは思えない。
俺は脳みそから湯気が出る程考えたがわからなかったので諦めることにした。
すると俺の目の前には再び文字が浮かび上がる。
「追記。説明も兼ねてこれが読み終わりましたらステータスオープンと声に出せばステータスが見られますのでそちらの確認をしてください。そしてその場所から南に進むと洞窟が見えてきますので中へお入りください」
俺は言われた通りに読み終えた後「ステータスオープン」と言ってみる。
するとそこにはまさにゲームのようなステータス画面が表示された。
名前 無名(龍ケ崎・竜騎)
レベル0
スキル
魔力自動回復A+ :時間で魔力が回復する 効果1秒/100
魔力伝導:手に触れたものに魔力を流す
耐性S:あらゆる状態異常を無効化する&耐性力100+
筋力S:筋力100+
体力自動回復S:時間で体力が回復する 効果1秒/1000
EX???:赤い瞳は全て飲み込み、青い瞳は全て焼きはらう。
HP150/150
MP1000/1000
筋力50(+100)/150
持久力150
耐性力100(100+)/200
知力5
信仰力200
運力50
色々ツッコミたい箇所はいくつかあったがスキルが豊富なのは特典みたいなものなのだろう。
ゲームで言えばいきなりSとか付いたスキルはまず持っていないしレベルも0なのでいくらでもステータスは伸ばせるはずだ。
なのでステータスの話はこれくらいにしておいて次に神様から言われた南に向かうことにしよう。
しかしここで問題が起きた。
「南って...どっち?」
ここにきて最大の困難が待ち受けていた。
そう何を隠そう、俺は壮大な森の中で絶賛迷子中なのだ。
仕方ないと言い訳をさせて欲しい。
なんて言ってもたった今来たばかりで地形などわかるはずがない。
せめて方位磁針かなんかがあればわかるが手持ちもないため万事休す。
ようやく始まった異世界生活がたった今五分もしないくらいで終了した。
俺はショックでその場に倒れ込む。
そのまま何もない時間が過ぎていきついに俺の脳みそは考えることをやめた。
すると俺はあることに気づいた。
それは、どこかで水が流れる音だった。
ちょうど喉も乾いていたし、行く場所もないため水の流れる場所を目指すことにした。
そのまま歩くこと数分、草むらを抜けるとそこにはそれなりの大きさの川が流れていた。
「やった。魚もいるし、川の水も飲めそうだ」
水は綺麗で、小魚のような生き物や鳥のようなものまで、生息している。
しかし今火を起こせそうな物はもちろんない。
それに水の確保も含め、川の流れ出る上層部まで歩くことにした。
ようやく上の方に到着すると、そこには見たこともないちょっとした石造りの建物があった。
俺は覚悟を決めて石造りの建物の中へと進んだ。
中は以上に涼しく、まるでエアコンの効いた部屋にいるかのようだった。
「おお、涼しいなぁ...ん? なんだあれ?」
奥の方には長細い配線や機械類が多く散らばっており、まるでどこかの研究室のようだった。
さらに奥へと進むとそこには配線やら何やらが取りつけられた黒い塊があった。
「しかし驚いたな。まさか石造りの建物に現代のようなものがあるなんてな。おっ! この黒い塊の入口か? まあ、電気も通ってなさそうだし急に動いたりしないだろう」
俺は黒い塊の中へ乗り込むと、案の定、真っ暗闇で何も見えなかった。
「なんにも見えねえよ!」
突如声が発せられた。
「生物の生存反応を確認...」
「え、え?ななななんだよ!?」
「魔力電源始動、生物の確認中...人間と認証。これより機体へのシンクロ率を測定...百%可能と確認。これよりパイロットの人体実験を開始します」
「ちょちょ、ちょっと待てよ! 身体検査!? 人体実験!? ああ、もうわからん!!! って、おいなんだこれ動けねえよ!」
俺の体ががっちりと固められ、身動きが取れなくなった。
暴れる隙もなく、口には毒マスクのようなものがつけられる。
次の瞬間、意識が飛び俺は目を開けると不思議な空間にいた。
「どこか分からないけど...なんでだろう、落ち着くな」
そしてそのまま不思議な空間を抜けると、視界が見え始める頃には、意識が段々回復していた。
しかし目覚めると視線は高く、先程まで黒い塊がいた場所には俺が立っていように感じる。
いや、おそらく立っているのは俺自身だろう。
「シンクロ率クリア、人体実験クリア、及びパイロットに推薦...許可が出ました。これより飛行テスト及び地上への帰還を開始します。よろしくお願いしますマスター」
「まてまてまて、こっちは全く分からないんだけどこの状況が!」
「マスターの質問を確認、応答、外へ出れば分かります」
「外へ? とりあえず外へ出ればいいんだなえーっと名前は?」
「名前...コードネーム、ニーズヘッグでございますマスター」
「ニーズヘッグ...いい名前じゃないか! 気に入ったよニーズヘッグ。とりあえず外へ出たいんだけどどうやって動くの?」
「応答、今現在マスターは眠った状態ですが脳波によりこちらの機体と結合しています。いつものように足を動かすイメージで足を動かして見てください」
「足を動かすイメージ...うーん、動け!」
ニーズヘッグの操作はかなり難しかった。
なぜなら、脳内の動きがそのまま外へと反映され、手足が動くからだ。
また地面に足をつけている感覚などは当然なかった。
すると黒い塊(俺)の右足が一歩前へと動いた。
同様に左足も動かすと、また一歩そしてまた一歩と、歩いていった。
そうして十数歩目くらいで外の明る光が目を刺激した。
「外だ! 外に出たぞニーズヘッグ!」
「了解、歩行テスト完了。続いて周囲のマップ検索及び機能のアップデートを開始...完了。続いてシンクロ持続力を再確認...完了。最後に飛行テストと外見確認を行います」
「飛行テストってことは飛べるのか! ただの黒い塊なのに?」
「まず外見確認を行います。マスター腕や足などをご覧下さい。この機体はニーズヘッグ及びドラゴンをモチーフとした魔導戦闘特化型竜兵装になっております。今は防御型のため外装を纏っております」
ニーズヘッグの言う通り外見を確認した。
先程までの黒い塊とは違い、外装は黒が基調とされ、手足や関節の継目の箇所からは青いオーロラのような光が湧き出ている。
また手と足には大きなかぎ爪がついており、背中にはドラゴンの象徴とも思える大きな翼、そして尻尾の先端には鋭い針のようになっていた。
しかし、体調は二、三メートルと割りと小さく、中も人が一人入るので精一杯だ。
その時、俺はふと思った。
神様の言っていた貴方の理想と言うのは、俺のやっていたゲームに出てくるドラゴンをイメージしたのではないのかと。
ちなみにゲームキャラも同様、機械のドラゴンなので間違いではないのだが、欲を言えば俺は本物もドラゴンになりたかった。
しかし、俺はこの体(機体)が大いに気に入った。
夢にまで見たドラゴンになることができた、それだけで俺は満足しそうだった。
それにここは異世界だ。
本物のドラゴンになる手段も存在してそいそうなので探すのもいいだろう。
「よし、外見確認終わったぞニーズヘッグ。次は飛行テストだっけ?」
「了解。飛行テストに移行...翼及び外部とのシンクロを開始...成功致しました。これより翼と尻尾の感覚が発生します。それに伴い、感覚器官も復活します」
「おっ! おおおおおお! これが翼でこれが尻尾...んんんんんんんっっっ!! 最高だな!!」
先程まではなかった感触が背中へと現れる、一瞬驚いてしまう。
「マスターの興奮を確認。鎮静剤を注入」
「おい! 俺のテンションの上昇を状態異常と認識するな!」
「追加で体を綺麗に洗浄し栄養剤を注入...成功。これによりマスターの体は、数ヶ月は持つはずです。では飛行テストを開始。魔力エンジン起動、翼を広げてくだされば、いつでも飛べますマスター」
「翼を広げる...」
翼のイメージは少し難しかった。
背中に翼の重みや尻尾の重みはあるものの、動かしたことはないので広げると言うより、持ち上げるのが難しかった。
「翼は腕を広げるようなイメージを持つことをおすすめします」
「なるほどな! 腕を広げるイメージならこうするだけだ!」
「翼の拡張を確認。飛びます!!」
「うおっ!!!!」
背中からの爆発音と共に宙へと投げ出され、一気に上空へと飛んでいく。
空中では機体がビリつくほどの物凄い空気の圧だった。
だが機体自体に問題はなく、特に装甲の軽い翼でもビクともしなかった。
俺の体は雲を抜け、さらに上へと飛び上がり、宇宙が見え始めた。
「なあニーズヘッグ。これはどこまで行けるんだ」
「応答、測定不可能。この機体は特殊な金属で出来ており、傷や汚れや風化などは絶対にしません。また機体に損傷があった場合には、自動復元システムがありますのでマスターがいる限り、この機体はどこまでも飛ぶことが可能です」
「はは、そりゃ凄いな。これが、俺が一生をかけて追い求めたドラゴンか.........いや、まだだ。俺はまだ飛べる! 俺のドラゴン道はこれからだ!」
「飛行テスト完了、これよりマスターの希望を叶えるため異世界の言語をアップデート。完了.......しましたマスター♡」
「何故急に萌声に!?」
「嫌.....ですか?マスター♡」
「いや、ニーズヘッグさん最高っすわ!!」
「えへへ〜、マスターが喜んでくれて嬉しいです♡ では早速マスターのドラゴン道を極めるために街へご案内しますね」
「了解ニーズヘッグちゃん。いやーやっぱ異世界最高!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます